第4話
訪問看護を知る
近年、需要が増えている訪問看護では、身体の疾患による利用だけではなく、精神疾患のケアで利用されている方もいます。一般の訪問看護と大きな違いはありませんが、身体疾患のケアと精神疾患のケアという点では違いを感じる場面もあります。本記事では、精神科訪問看護の役割と業務内容、精神科訪問看護師に必要な資格や条件などについて解説します。
目次
精神科訪問看護とは
精神科訪問看護とは、看護師や精神保健福祉士、作業療法士など特定の資格保持者が、精神疾患などを抱える利用者の自宅に訪問し、ケアを行うことを指します。心療内科や精神科に通院している方であれば、はっきりとした病名がついていない方であっても、現在就労中の方であっても利用することができます。
精神科訪問看護は、通常の訪問看護と同じく主治医の訪問看護指示書に基づいたケアを行いますが、ケアの内容はさまざまです。利用者の就労や環境について相談にのることや、時には薬を飲むタイミングや生活リズムを整えるためにどうするかなど、一緒に考えていくという支援を行うこともあります。
近年、精神疾患を抱える患者数は増加傾向にあり、厚生労働省の調査（参照：厚生労働省｜個別事項（その３））では2017年には400万人を突破したとされています。訪問看護の特性上、利用者一人ひとりと深く関わり、各利用者に寄り添ったケアを行うことができるため、急性期を脱した精神疾患のケアは通院や入院ではなく、慣れ親しんだ環境である自宅で訪問看護を利用したいという方も増加しています。
精神科訪問看護師の仕事内容
精神科訪問看護師の普段の仕事内容を見ていきましょう。基本的な流れは通常の訪問看護と同様に主治医から指示を受けて訪問しケアを行います。
訪問した際に行う主なケアは以下のとおりです。
- 日常生活の維持
- 生活技能の獲得・拡大
- 対人関係の維持・構築
- 家族関係の調整
- 精神症状の悪化や増悪を防ぐ
- ケアの連携
- 社会資源の活用
- 対象者のエンパワーメント…など
また、ケアを行う主な対象疾患は以下のとおりとなっています。
- 統合失調症
- うつ病
- 双極性障害
- 自閉症スペクトラム障害
- 身体の傷病
- 不安障害
- パニック障害
- 持続性気分障害…など
精神科訪問看護師に必要な資格とスキル
精神科訪問看護師に必要な資格とスキルは以下となります。
| 資格 | 看護師免許または准看護師免許 |
| 条件 | ①算定要件を満たす研修修了者 ②精神科を標榜する病院・クリニック精神保健福祉センター・保健所等で1年以上勤務・自立支援の経験があること ※精神疾患を有する者に対する訪問看護の経験を１年以上有する者も含む |
①②いずれかの条件を満たしている場合は精神科訪問看護師として働くことができるため、精神科の看護経験がない場合でも、①の算定要件を満たす研修を受けることで精神科訪問看護師になることが可能です。
研修は全国訪問看護事業協会など様々な団体で開催されています。オンラインでの研修を行っている団体もあるので、それぞれを比較し、日程や参加方法など自身の都合に合わせて受ける研修を決めましょう。
精神科訪問看護師に向いている人
精神科訪問看護師に向いている人はどのような人でしょうか。
精神科訪問看護は利用者一人ひとりと深く関わり、信頼関係を構築しながら、症状の観察や行動変容を促します。身体疾患と異なり、目に見えない気持ちの面でのケアが多く、利用者の自宅を訪問した際に、生活環境を確認した上で普段とは異なる変化に気付いたり、利用者自身が自身の感情をコントロールできるよう継続的かつ細やかな支援が必要です。
そのため、お一人お一人と時間をかけて向き合いたいという方には向いていると言えます。
精神科訪問看護師に役立つ資格
最後に、精神科訪問看護師として働く際、日々の仕事に役立つ資格やスキルアップに繋がる資格を紹介します。
JSAトリートメントMAS認定臨床看護師
アロマセラピーを医療に活用できる資格です。この資格を取得することで看護師の医療資格の範囲内でアロマを使った施術ができます。
その日の利用者の気分に合わせて精油を選び、ハンドマッサージや足浴を行うことでリラックス効果やストレスの軽減が期待できます。
精神保健福祉士（PSW）
精神疾患がある方の生活問題からの自立や社会復帰のサポートを通して、利用者が持つ自分らしいライフスタイルの獲得を支援することを目的とした資格です。看護師資格とダブルライセンスを持つことで知識も深まり、転職にも有利に働きます。
まとめ
精神疾患による療養やケアが必要な場合、精神面での負担が少なく慣れ親しんだ自宅でケアを受けたいという人が増えています。そのため近年精神科訪問看護の需要は高まっています。
精神科訪問看護は専門性が高い反面、利用者との信頼関係を築くことへのやりがいや、スキルやキャリアの幅も広がっていきます。興味のある方は、精神疾患に対応している訪問看護への転職を検討してみてはいかがでしょうか？
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▼参考記事
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