需要が高まる訪問看護の仕事、求められるスキルと向いている人の適性とは

需要が高まる訪問看護の仕事、求められるスキルと向いている人の適性とは

日本では超高齢社会が続くなかで、療養の場は「病院から在宅へ」と変化してきました。そして、さまざまな在宅療養のニーズに応えるため、訪問看護師のニーズも増大してきています。在宅療養の場で働く訪問看護師とはどのような仕事なのか、求められるスキルや向いている人の適性について、ソフィアメディの現役訪問看護師Mさんのアドバイス付きでご紹介します。

訪問看護の仕事とは

訪問看護とは、療養する方の自宅や施設に看護師が訪問し、主治医の訪問看護指示書のもと主治医やケアマネジャーによって立案されたケアプランに沿って看護を提供するサービスです。

お客様(ご利用者様)は、医療的ケアが必要や乳幼児から要介護認定を受けている高齢者、終末期にある方、後遺症でリハビリ中の方、精神障害のある方など、幅広い年齢でさまざまな病気や障害を抱えた方が対象となっています。訪問看護は、公的保険制度である医療保険や介護保険を利用してサービスを受けることができます。

訪問看護のニーズと社会背景

日本は超高齢社会となり、医療提供体制が病院完結型から地域完結型へと移行が進められています。また、少子超高齢多死社会で家族形態の変化もあり、在宅療養者が急増し、重度化・多様化・複雑化してきている現状があります。こうしたさまざまな在宅療養のニーズに応えるため、訪問看護師のニーズも増大すると見込まれ、国や日本看護協会などでも関連する施策、事業が進められています。

また、国からは2025年度には訪問看護従事者が12万人必要との推計値が示されました。2010年の3万人から比べると、2019年には6万人を超えて、倍以上に増えていることがわかっていますが、必要数にはまだ及ばない状況です。

参照:

日本看護協会 訪問看護師倍増策

https://www.nurse.or.jp/nursing/zaitaku/houmonkango/index.html

医療従事者の需給に関する検討会 第5回 看護職員需給分科会

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000126924_00005.html

資料2 病院・有床診療所・訪問看護・介護保険サービスの看護職員数の推計値について(ごく粗い試算)https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/000469054.pdf

訪問看護師の在宅における役割

訪問看護は、病気や障害を持った人が住み慣れた地域でその人らしく暮らせるように、人生の最期は自宅で迎えたいと願う方々が最期まで暮らせるように、支援する役割があります。病院では生活を見据えた治療を目的とした看護に対し、訪問看護は生活に直結した支援を目的とした看護を行っています。病院と訪問看護は療養場所が違うだけではなく、こうした考え方やケアの優先度などの違いがあります。訪問看護では、地域のなかや生活のなかで、お客様とご家族を支え、関係職種と協力しあって、一人ひとりに必要な支援を行うことが大切です。

実際に行う支援には、健康状態の観察や療養生活のサポート・アドバイス、療養環境の調整、病気の治療のための看護、精神的・心理的なケア、家族への相談・アドバイス、他職種・他施設への連絡・調整などが在宅で訪問看護師が担うおもな役割です。

〈M看護師からのアドバイス〉 <strong>訪問看護師としての大事な役割について</strong>
〈M看護師からのアドバイス〉 訪問看護師としての大事な役割について
病院では患者さんが検査や治療を受けたいと訪れ、病院側のシステムありきで動くことが多いですが、訪問看護ではお客様に求められてお宅に入ります。その方の人生のなか、生活のなかに入らせていただく、そしてその方はこれから先もその場所で暮らしていくという意識が大切です。看護師はどうしても本来持っている正義感や患者さんを管理しよう指導しようという気持ちが出てしまいがちですが、訪問看護ではその考えをあらためること、柔軟に対応していくことが求められます。

訪問看護の具体的な仕事内容

訪問看護の仕事をより具体的にみていきましょう。

健康状態の観察と療養生活のサポート・アドバイス

  • 全身の健康状態(バイタルサインや皮膚の状態、意思疎通・認知精神状態、睡眠、栄養状態、排泄状況など)の観察とアセスメント
  • 日常生活に影響を及ぼす要因のアセスメント
  • 清潔ケア、栄養管理・ケア、排泄管理・ケアなど
  • 褥瘡や合併症などの予防、健康維持や病状悪化防止の支援
  • お客様への相談・アドバイス

療養環境の調整

  • ベッドサイドや生活環境の調整(いつも過ごすところ、よく触れるところ、よく歩くところなどの動作・動線の確認、過ごしやすいように調整)
  • 使用する在宅酸素や人工呼吸器、吸引器などの医療介護用具・機器の管理

病気の治療のための看護

  • 医師の指示に基づく医療行為(点滴や注射、褥瘡・創傷処置など)
  • 医療機器の使用に関するケア(経管栄養や酸素療法、カテーテル類のケア)
  • 疼痛・血糖など症状マネジメントとコントロール
  • 服薬管理

精神的・心理的なケア

  • 精神・心理状態の安定化に関するケア
  • コミュニケーション支援
  • 希望や想いの尊重、尊厳の維持、権利擁護

家族への相談・アドバイス

  • 介護・看護負担に関する相談、精神的・心理的ケア
  • 必要なサービスや窓口など社会資源の紹介
  • 日常ケアのアドバイス

他職種・他施設への連絡・調整

  • 医師やケアマネジャー、リハビリスタッフ、病院やクリニック、居宅介護支援事業所など関係各所への連絡・調整

訪問看護師の1日

訪問看護師の1日はどのような動きになっているのでしょうか。ソフィアメディの訪問看護師の1日のスケジュールを参考にしてみてください。

時間 仕事内容 詳細
8:45出社・整容(更衣、髪の乱れなどチェック)
・スケジュールの確認
9:00 朝礼・ステーシ
ョンの環境整備
・経営方針書の読み合わせ
・全スタッフでのスケジュール確認
・スタッフ間での情報共有
・ステーション内の掃除
・お客様の情報収集、必要時訪問時間変更の電話連絡
※週明けや祝日後は、場合によってその際の体調や変化をケアマネジャーへ報告
・必要物品の確認、補充
9:15 訪問へ出発
9:30 訪問1件目60分訪問看護
10:30移動※訪問後や訪問時間の間隔が空いている場合は、ケアマネジャーへ報告書・計画書を手渡し、状態報告することもある
10:45 訪問2件目 60分訪問看護
12:00昼休憩・ステーションに戻り、昼食を食べる
・30分訪問であれば、午前中に3件訪問することも
・昼休憩に入る時間は訪問件数によって前後する
・必要時、他職種へ状態報告の連絡や折り返しの連絡をする
12:55 移動
13:10 訪問3件目 30分訪問看護
13:40移動
14:00訪問4件目30分訪問看護
14:30移動次の訪問まで時間がある時はステーションに戻って記録を書いたり、外で書くこともあります。
14:50訪問5件目60分訪問看護
15:50移動ステーションへ戻る
16:10訪問6件目
17:10移動
17:30書類業務、
報連相
・日々の記録
・他職種との連携
・ケアマネジャーへ初回訪問の報告や現状報告
・医師へ状態報告※内服の検討依頼など
・スケジュール調整
・スタッフへの情報共有
・状態変化や注意事項の申し送り、緊急電話の対応方法
・着替えて制服の洗濯
※月末は計画書、報告書作成などの書類業務も行う
※訪問後、状態が心配なお客様やご家族へ状態確認の連絡を行うこともある
18:00 終業 ※その日の状況で残業あり
※訪問件数が多い日には18:30頃まで記録や計画書、
 報告書の作成に追われることも

訪問看護師に求められるスキル・大切なこと

まずは、訪問看護の役割や仕事内容に関する知識・スキルが必要になってきます。そのうえで大切になってくるのが、お客様やご家族の信頼を得て、相手の生活を想像し、想いをすくい上げ、お客様にとって必要なことは何かを考え続けることです。そして、在宅の現場で起こりやすい合併症やリスク、状態変化を見極め、アセスメントし看護に反映すること。多職種や各施設の壁を越えた連携、コミュニケーションやマネジメントスキル、制度にまつわる知識、接遇マナーなどが大切になってきます。

こうしてみると幅広く、さまざまなスキルが必要になってくることがわかります。お客様やご家族と接する時間が長い訪問看護師が生活の視点で観察・アセスメントし、看護ケアに活かしていくことが大切です。

  〈M看護師からのアドバイス〉 <strong>医療知識や技術だけではない、人のためにと思えるスキル</strong>
〈M看護師からのアドバイス〉 医療知識や技術だけではない、人のためにと思えるスキル
スキルとは少し違うかもしれませんが、人が好き、「誰かのために役に立ちたい」と思えることが大きなスキルではないかと思います。また、できないことを素直に言える、失敗をちゃんと認められる誠実さも大切です。このお客様にとって何が一番必要なのかを自分だけではなく周りと一緒に考えることができるのも大事です。

訪問看護師に向いている人の適性や性格

訪問看護は基本的に一人で訪問し、対応するところからはじまります。そのため、指示待ちではなく、主体的に臨機応変に創意工夫して対応できる人が求められるでしょう。まずは生活の場であることを前提に、療養にも適した環境にするために支援できる人、その方にとって何が必要なのか、どうありたいのかを考え続けられることができ、お客様やご家族ともコミュニケーションを図れる人が向いています。

また、訪問看護ではお客様のご自宅や施設に伺うため、移動が多くなります。ステーションによっては自転車や原付、車での移動とさまざまですが、清潔ケアや入浴介助などもあり、ある程度の体力が必要です。

自信がない・苦手だと感じる人でも工夫次第で解決

なかには、ひとりで主体的にやるのが苦手だと言う人もいるでしょう。訪問看護ステーションによっては、受け持ち制ではなくチーム体制をとっているところもあるため、そうしたところで働くことで苦手を克服しやすい環境もあります。訪問看護はひとりで訪問するかもしれませんが、ひとりですべてみて完結しなくてはいけないわけではありません。ステーションのスタッフや管理者、リハビリスタッフやケアマネジャーなどと相談・連携をして乗り越えていきましょう。

  〈M看護師からのアドバイス〉 <strong>誰かのために役に立ちたいと素直に思える人に活躍してほしい</strong>
〈M看護師からのアドバイス〉 誰かのために役に立ちたいと素直に思える人に活躍してほしい
私は訪問看護に向いているのは素直な人だと思います。誰かのために役に立ちたいという気持ちは看護師の多くが持っている素地ではないでしょうか。また、病院でさまざまな経験をしてきてほしいのはありますが、知識や技術が100点の優秀な看護師よりも、素直でいて、学び続けることができることのほうが大切だと思います。

訪問看護の就職、転職で確認すること

訪問看護ステーションへの就職、転職で入職後のギャップやミスマッチが少なく済むように、以下のようなところに注意しましょう。

  • 事業所について(運営母体、規模、ビジョン)
  • 対応エリア、移動手段(車、自転車、原付、電車など)
  • 勤務体制(勤務時間・休日数など)
  • 事業所のスタッフ人数(常勤と非常勤)
  • お客様の人数、内訳(医療的ケアが多い、精神疾患や小児が多いなど)
  • 1日の訪問件数
  • オンコール体制(担当頻度、電話・訪問頻度、手当など)
  • 研修・オリエンテーション体制
  • 給与(基本給と賞与、手当の内訳)

事業所によっては、見学や1日体験ができるところ、非常勤で数時間からチャレンジして常勤へ切り替えるというケースもあります。初めて訪問看護にチャレンジする場合にはうまく活用していきましょう。

  〈M看護師からのアドバイス〉 <strong>人との相性が大きい、一緒に働いていけるかを考える</strong>
〈M看護師からのアドバイス〉 人との相性が大きい、一緒に働いていけるかを考える
訪問看護では給料が高いところが目立つ傾向にありますが、就職や転職の場合、一番は人との相性が大きいのではないでしょうか。どのような人たちが作った会社なのか、どんな人たちが働いているのか、自分は本当にこの人たちと一緒に働きたいかと考えることが大切です。どんな想いで訪問看護をしているか、そのビジョンは働く上で自分たちの精神的な支柱になります。
また、最近では新人看護師さんや若手看護師さんでも訪問看護にチャレンジする人が増えてきました。自分自身もここで育つぞという気概、覚悟もある程度必要ですが、それをちゃんと支えてくれるような会社であることも大事です。

まとめ

訪問看護では、お客様であるその方の生活や想いの視点を大切に、訪問看護師が日々看護ケアを行っています。お客様が安心して在宅療養できるように支援する訪問看護師の仕事に、あなたも就いてみませんか。

ソフィアメディでは、採用説明会も定期的に行っております。また、カジュアル面談(※)で採用スタッフが相談に乗ったり、事業所によっては見学できたりするところもあるので気軽にお問い合わせよりご相談ください。

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※カジュアル面談

この面談で合否を決めるものではなく、お互いを知るために1対1でカジュアルに、リラックスしながら対話できる方法です。