【転職】病院看護と訪問看護の違いとは?

【転職】病院看護と訪問看護の違いとは?

近年、高齢化社会や新型コロナウイルス感染症の影響から「自宅療養をしたい」と希望する方が増えており、在宅医療の最前線である訪問看護の需要が高まっています。これに伴い、病院での勤務から、訪問看護に働き方を変えたいという看護師も増えています。

しかし、病院と訪問看護では勝手が違うため、不安に感じる方も多いのではないでしょうか。本記事では、訪問看護師の役割や病院看護と訪問看護の違いについて解説します。

訪問看護師とは

病院看護と訪問看護の違いを知る前に、訪問看護師の役割についておさらいします。

訪問看護師の役割

訪問看護師は、医師が作成した「訪問看護指示書」をもとに、サービスを利用される方の自宅に直接訪問し、健康状態の確認や療養指導、医療処置、身体介護などのケアを行います。利用者とその家族、医師の間に立ち、時には橋渡し役となる存在です。

また、理学療法士や作業療法士など、他の医療職種と連携します。対象の利用者は乳幼児から高齢者まで幅広く、内科系の疾患以外にも脳血管疾患、筋肉骨格系、認知症、悪性新生物、心疾患など対応するケアは多岐に渡ります。利用者の個性を尊重し「利用者が望む生活」の支援を行います。

訪問看護師の特徴

訪問看護師は、利用者一人ひとりに寄り添いながらケアを行うことが特徴です。利用者の生活や背景をしっかりと理解して関わることで「訪問看護師個人」として利用者と向き合います。

利用者の人柄や性格といった個性に合わせた対応が求められること、訪問先が利用者の自宅のため、病院とは異なり医療物品や環境による制限から、臨機応変な対応力が求められることも大きな特徴です。大変さももちろんありますが、同時に訪問看護ならではの面白さや充実感を得る看護師が多くいます。

訪問看護師の仕事内容とは

訪問看護師の仕事内容は、日々の健康管理からターミナルケアまで幅広く、一人ひとりの症状にあわせたケアを行います。

以下は訪問看護師が、利用者の自宅で提供している主なケアの内容となります。

1.健康状態のアセスメント
・症状やバイタルサインのチェック…など
2.療養生活のお世話
・ 清潔ケア
・ 栄養管理・ケア
・ 排泄管理・ケア
・ 療養環境の整備…など
3.医療処置
・ 医師の指示に基づく医療行為
・ 点滴・注射、褥瘡処置など
・ 在宅酸素療法の管理や吸引、服薬管理…など
4.病状悪化の防止やリハビリ
・ 褥瘡・拘縮・肺炎などの予防
・ 寝たきり予防のためのケア…など
5.ターミナルケア
・症状緩和
・心のケア…など

病院看護との違い

では病院看護と訪問看護には一体どのような違いがあるでしょうか。ここでは、それぞれの違いについて解説します。

訪問看護の現場は利用者の自宅

まず、大きな違いの一つは看護の現場です。訪問看護は主治医から交付される訪問看護指示書に基づき、利用者の自宅や施設で行います。病院のように専門の医療設備は揃っていませんが、自宅で利用者自身が慣れ親しんだものを使うことでリラックスしてケアを受けてもらうことができます。

訪問看護は決められた時間での断続的な介入、ケアを行うため、事前に先に起こりうるかもしれない変化を予測してケアを行うことがより重要となります。しかし、そのすべてを予測することは当然不可能なので、利用者のちょっとした変化に気が付いた時は確認をしたり、些細なことでも周囲とのコミュニケーションをとって不測の事態に備えることが大切です。

また、訪問看護は訪問している看護師が一人だけで看護を行うと勘違いされがちですが、実際は一人でケアを行うわけではありません。看護師と医師との連携はもちろん、ケアマネジャーや保健医療福祉機関と連携し、チームで利用者をケアします。同時に利用者の家族ともコミュニケーションをとり、関係を築いていくのも、より良いケアを行うために大切なことです。

病院看護と訪問看護では目的が異なる

病院看護と訪問看護の違いは、看護ケアを行う場所が病院か、利用者の自宅かというだけではありません。病院看護は、病気のケアや状態回復が最優先されるのに対して、訪問看護では、病気や障害の回復だけでなく、病気や障害を持ちながらもできるだけ普通に生活をしていくこと、そのサポートが目的となっています。そのため、利用者の希望に合わせたケアやサポートが必要となります。

訪問看護では、利用者のケアや服薬管理、点滴のほか、入浴補助や歩行訓練など、日々の生活に直結したサポートも行います。状況によっては、日常生活をより快適にするため、精神的なケアやコミュニケーション補助、福祉用具についてのアドバイスを行う場合もあります。

病院勤務から訪問看護になったときに困ること

では、病院看護から訪問看護に転職した際、そのギャップで困ることには何があるでしょうか。

他職種との連携が難しく感じる

訪問看護では、他の医療機関や他職種と関わる機会が多くあります。医療機関ごとに報告や連絡の方法が異なっていることが多く、様々なパターンを把握しなくてはなりません。地域の医療機関を知るだけでも手一杯な状況で、個別の対応方法まで把握することはとても大変です。

また、ケアマネジャーとの関わりについても、どのようなことを共有すべきか、情報の取捨選択が難しく、戸惑ってしまうことがあります。その他にも、在宅療養には訪問リハビリ、通所リハビリ、デイサービス、ショートステイなどサービスの種類や関わる職種は多岐にわたるため、覚えることが多いと感じるでしょう。

しかし、利用者の現状における情報収集を行い、症状や具体的に利用者が困っていることと共に、どのような対応を望んでいるのかを各医療機関スタッフやケアマネジャーに適切なタイミングで報告することで、利用者への確認や対応が円滑に進むため、訪問看護スタッフの存在はとても重要です。

医療機関への報告内容や報告の方法は、管理者や先輩看護師に一度確認してもらうことで「個人としての対応」ではなく「事業所としての対応」として自信を持って行動することができるようになります。他職種との連携を図る際は職種によって担当できる業務が異なるため、ケアマネジャーを通して他職種への情報共有を行う必要がある場合も多くあります。そのため、情報共有の方法を習得できるまでは、管理者や先輩看護師に情報共有の内容やルートが間違っていないか確認してもらいましょう。

訪問看護の制度を覚えるのが大変

訪問看護では、介護保険と医療保険といった大きな括りだけでなく、公費や訪問看護指示書などたくさんのルールの中で仕事をしていきます。訪問先で利用者やその家族から質問を受けることや、ケアマネジャーとの関わりの中で制度についての話題が出ると、わからないことが多く返答に困ってしまうことがあります。曖昧な返答やセルフジャッジはトラブルの元となるので、不明点は先輩看護師に訊き、ひとつずつゆっくり覚えていきましょう。

求められるコミュニケーションのギャップに戸惑う

利用者の疾患や症状に応じて、医療処置が多い方から状態観察がメインの方まで様々なケースがあります。状態観察がメインの利用者を訪問した時など、バイタルサインの測定を終えると、残りの時間をどのように使えばいいのかと悩む看護師の方も多いのではないでしょうか。

病棟では患者さんと長く時間を過ごすことはあまり多くないので、訪問看護で利用者と長く過ごす時間に会話が続かず難しく感じるなど、病院看護とのギャップを感じる場面があると思います。訪問看護では寡黙な利用者から情報収集を行うことや、多弁な利用者から必要な情報を聴取するといったコミュニケーション技術も必要となってくるため、最初は戸惑うことでしょう。

ここでのコミュニケーション技術とは、必要な情報を利用者に話してもらうことであり、看護師側としては「聴く技術」がとても重要です。加えて、言語による情報だけではなく、時には五感で利用者の違和感を感じる力も大切です。看護師としては、「聴いて」「看て」「感じて」「表現する」力も必要となります。

「利用者さんとの会話が続かない」、「利用者さんが喋りすぎてしまい必要な情報が聞けない」と悩む看護師は、ぜひ看護の基本姿勢である「傾聴」の技術を思い出してみましょう。

そして、設定された時間の中で聴取すべき観察項目を整理し、利用者さんのペースにあった質問や切り返しをシミュレーションすることで時間を上手く使えるようになるでしょう。

訪問看護師の需要

高齢化社会や在宅医療の推進、新型コロナウイルスの影響を受け、近年、訪問看護の需要は益々伸び続けていますが、現状はまだまだ人手が足りていない状況です。2018年の厚生労働省の調査では、訪問看護ステーションで働く訪問看護師は約5万人とされており、これは就業している看護師全体の約4%とごく僅かです。

2025年にはこの2.5倍以上になる約12万人の訪問看護師が必要であると予想されています(参照:厚生労働省|平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況)。幅広い役割を担っている訪問看護師は「地域包括ケアシステム」の構築にあたり、重要なポジションのため、国は訪問看護師の数を増やそうと様々な施策を行っています。

また、人材を獲得するための取り組みとして、待遇の改善や、教育体制を充実させている訪問看護ステーションも増えています。訪問看護師への転職を考えている人にとっては、追い風が吹いているといってもいいでしょう。

まとめ

病院看護と訪問看護の違いについて紹介してきました。訪問看護は、働く場所が利用者の自宅であるということだけでなく、医療における優先事項も異なるという特徴があります。訪問看護師として働くことに興味がある方は、それぞれの違いについて事前に調べ、転職後にそのギャップで驚かないように準備をするようにしましょう。

未経験で訪問看護師に挑戦するスタッフも多いソフィアメディ

指定訪問看護ステーションを主軸として、北海道・関東・東海・北陸・関西・九州で約90事業所を展開しているソフィアメディ。「英知を尽くして“生きる”を看る。」というミッションのもと、病気だけでなく、お客様やそのご家族の人生そのものを支える在宅医療サービスを提供しています。

また、「安心であたたかな在宅療養を日本中にゆきわたらせ、ひとりでも多くの方に、こころから満たされた人生を。」という想いをビジョンとして掲げ、超高齢社会においても、誰もがその人らしい人生を大切に、安心して療養生活を送れる医療体制作りを進めています。

利用者にとって、よりよいケアを行うため、スタッフの教育体制にも力を入れています。豊富な研修やセミナーの実施など、訪問看護未経験の方でも安心してスキルアップを図ることができるよう、在宅医療を支える取り組みや挑戦を続けています。

▼参考記事

さらに、ソフィアメディでは働き方改革における新たな取り組みとして「ソフィアメディWOW!(Work for Our Wonderful life!)」を実施しています。これは、1時間単位の有給休暇や、ベビーシッター料金の半額補助、やむを得ない事情で退職した元社員を同条件で再雇用など、社員のワークライフバランスを尊重しつつ、自分らしく働くための取り組みです。

以下の記事では、ソフィアメディでの働き方や、ソフィアメディで働くスタッフの想いを紹介しています。

▼参考記事

訪問看護師への転職に迷っている方は、ぜひソフィアメディの訪問看護師の働き方を参考にしてみてください。