ソフィアメディには、看護師歴の長いベテラン看護師が多く在籍しています。経験年数を重ねれば重ねるほど、後輩の指導や教育をする機会も増えていくのではないでしょうか?Sさんもまた指導者として多くの若手の教育に携わってきましたが、子育てが落ち着いたことを機に、自らが「学ぶ」環境にもう一飛び込みたいと考えました。Sさんはなぜ学び続けるのでしょうか?
■S.Sさん/訪問看護師・管理者/ステーション鹿島田
大学病院の消化器系に8年勤務。産休・育休をはさみ、緩和外来で約7年勤務。その後、医療法人が運営する訪問看護事業所で3年勤め、知り合いが経営する訪問看護事業所の立ち上げに参画。2018年にソフィアメディに入社し、ステーション鹿島田の管理者に。プライベートでは、カメラ、ウクレレなど多様な趣味を持つ。現在は昔からの夢である英語を話せるようになるため、英会話の特訓中。
「もっと学びたい」子供が巣立ち変化したキャリアへの想い
ーSさんはソフィアメディの中でも訪問看護歴が長いですよね。
訪問看護は14年になりますね。ソフィアメディは訪問看護3社目になります。
その前は大学病院の消化器系に8年、出産と育休を挟んで緩和外来で7年半ほど勤めておりました。
ー最初に訪問看護に飛び込んだキッカケは何だったのですか。
外来に勤めているとき、だんだん自力で外来に来られなくなってお姿を見なくなっていく患者様がいらっしゃって、その後どうされたのか、家でどのように過ごしているのかずっと気になっていたんです。
ちょうどそのタイミングで、看護師の先輩の旦那様が訪問看護の事業所を立ち上げることになり、声をかけていただきました。
ただ、いきなり訪問看護未経験で立ち上げメンバーとして飛び込むのは難しいと思ったので、外来を辞める前にケアマネジャーの資格を取り、外来の先生に病院を紹介していただいて、当時は外来ではできない処置や点滴、浣腸など、在宅で必要な処置を勉強しました。その後医療法人が運営する訪問看護の事業所でケアマネジャーと訪問看護師を兼任して3年働き、その後先輩ご夫婦の立ち上げに合流して管理者として事業所の運営を行っていました。
ーその後ソフィアメディに転職された理由を教えてください。
立ち上げた事業所に11年勤めたのですが、ママさんが多かったので「無理しないでやろうね」という空気がありました。とても働きやすい環境で良かったのですが、一方で私自身は子供が成長し手を離れ、もっと学びたいという想いが強くなっていたんです。
その事業所の中では訪問看護経験も私が一番長く、後輩をどんどん育てていく中でやはりインプットよりもアウトプットの量の方が多かったので、看護師を続けていくのであればもっと学べる環境にいこうと思いました。そのような環境を探す中で出会ったのがソフィアメディでした。
ーソフィアメディであれば学べると感じられたのですね。
そうですね。研修やしっかりした教育体制も魅力でしたし、何より、経験は様々。私にはない経験をしている管理者がたくさん在籍されていたので、学べることがたくさんあるだろうなと感じました。やはり個人の事業所に比べると、横のつながりや交流の機会が圧倒的に多いので、色々教えていただけるだろうなと。
「もっとできることがあったのではないか…」ケアでの悔しさが学びの原動力に
ーSさんは呼吸療法認定士、認知症ケア専門士、新リンパ浮腫研修、喀痰吸引等指導研修など様々な分野の資格や研修受講歴をお持ちですね。
多くは訪問看護に従事し始めてから取得したり、研修を受講したものです。自分の専門の領域を究めるために資格を取得される方やさらに学びを深める方が多いと思うのですが、私の場合は動機が少し違って、お客様へのケアで悔しかったことが様々な資格取得や研修受講のキッカケになっています。
お客様のケアをする中で、もっと何かできたのではないかともどかしい思いをすることがあります。次に同じケースがあった時にはそのような想いを絶対にしたくないという決意からその分野を学び直し、知識をつけることをしています。
ーSさんのもっと良いケアをするために追求し続ける姿勢が本当に素敵です。
在宅は本当に幅広いので、自分が学生や病院時代に学んだ知識だけではやっていけない分野なのかなと思っています。私の経験年数でも初めての病気に出会うこともありますし、何年経験しても日々勉強していかないといけないんだなと日々実感しています。
ー資格取得や学び直しのキッカケとなった印象的なエピソードを教えていただけますか?
まだ在宅を始めたばかりの頃、訪問していた末期の間質性肺炎の患者様が「苦しい苦しい」と辛そうにされていました。使用酸素は14リットル、最期の時には、主治医が大きな酸素のテントを作るなどされていました。何とか苦しさを軽減して安樂過ごすことは出来ないか?とチーム皆で必死に考えました。最期はご自宅で看取ることができたのですが、その時は私自身、在宅での酸素投与の経験が初めてだったので、もっとできることがあったのではないかとずっと考え続けてきました。そのお客様のケアをキッカケに呼吸療法認定士を取得しましたし、ALSのお客様をケアさせていた際は人工呼吸器についても学び直しました。
自信を持って「安心して帰ってください」と言えるように。これからの訪問看護に必要なこと
ー長年訪問看護に従事されたSさんの立場から、社会においての訪問看護の必要性をどのように感じていますか?
長年従事する中で、年々中重度のお客様の高齢化が高まっているなと感じます。そして、そのような方々がご自宅で医療を受けられる割合も増えています。ですので、今後中重度の方々を在宅で対応できないと病院だけでは受け皿がもう足りませんし、退院調整をする中で、帰りたいけど帰れないという方が今も多くいらっしゃいます。サービス調整の問題であったり、金銭面であったり、家族の問題であったり、在宅を選択すれるのも様々な条件や課題があると思いますが、まず、ベースとして帰りたいと思った時にすぐに安心して帰れる受け皿を私たちが作るのが前提だなと思っています。
以前は24時間体制でない訪問看護事業所も多くありましたが今はどこも24時間体制が当たり前になっています。365日体制も多くなっていますし、中重度のお客様にとっては訪問看護の中でも24時間365日体制であることが第一選択肢になると思います。
中重度の方が増えるということは、そういった体制が当たり前に求められてきますし、それが安心して家で過ごせるということに直結していくのだと思います。
ー受け皿の体制を整えるために特に重要だと感じることはありますか?
私たちも自信を持って「いつでも帰ってきてください」と言えるようなスキルや経験を持ち合わせていくことが今後さらに重要になっていくなと感じます。
例えばALSの人工呼吸のお客様がいらっしゃっても、現状ステーションスタッフ全員が難病や人工呼吸器の方に対応できるわけではないんです。いずれは全員が対応できるようになっていく必要がありますし、そのような経験を積める環境が必要だなと感じています。
ただ、訪問看護は病院とは患者様の人数も違いますし、ご自宅でのケアの個別性も高く、体制的に経験や練習がしやすい環境ではないので、病院やクリニックと連携してそのような環境を整えていくことが重要だと思います。
ーステーション鹿島田では、そのようなところをカバーするためにしていることありますか。
ランチミーティングの時間を使って勉強会やお客様の細かな情報共有をしています。やはり練習や経験できる機会も少ないので、先輩や仲間の話を聞く・共有することで、自分がケアすることを想定しながらどんどんイメージを膨らまし知識に変え、対応力も上げていって欲しいなと思います。
ーでは最後に、Sさんの中で今後訪問看護師として実現したいことなどありますか?
昔から、お亡くなりになられて訪問が終了したお客様のご家族様のことがいつも気になっています。同じようにご家族様を気にかけているスタッフもいるので、ご家族様にお手紙を書くなどのグリーフケアをステーション鹿島田でも実践していきたいなと考えています。日々の業務がある中で新しいことを始めるのは簡単ではありませんが、少しずつお客様のためにチームとしてできることを広げていきたいなと思っています。
ーグリーフケア、素敵なチャレンジですね。いつか実現することを応援しています!貴重なお話をありがとうございました!
キャリアをどれだけ積んでも学ぶことをやめないSさん。その学ぶ熱意の源泉はお客様のためにもっといいケアをしたいという看護師としてのプロ意識でした。そんなSさんの看護に向き合う姿勢が多くの方の背中を押すキッカケになれば幸いです。
[取材・文・写真]中村