【セミナーのご案内】在宅医療の質をどう評価し、活用するか

【セミナーのご案内】在宅医療の質をどう評価し、活用するか

サービス業においてもっとも重要なポイントともいえる、お客様満足度(以下、CS)。サービス業のみにとどまらず、病院や在宅分野でも、医療における質を評価する指標としてCSは重要視されてきています。ただし、CS調査を実施することは現場や関係者にとって負担も大きく、継続する難しさなどさまざまな課題があるのではないでしょうか。

ソフィアメディ在宅療養総研では、すべてのCS調査結果をホームページに公開されている、在宅療養支援『楓の風』より野島さんと下手さん、そして患者中心の医療サービス提供の普及と振興に関する活動を行い、医療の質向上に寄与することを目的とした日本 Patient eXperience(以下、PX) 研究会より構内さんをお招きし、在宅医療におけるサービス評価をテーマに訪問看護師や在宅医療に従事する方向けのセミナーを開催します。

イベントタイトル:在宅医療の質をどう評価し、活用するか
日時:2022年6月15日(水)18:30~20:00
方法:オンライン開催(Zoom)
参加費用:無料
申し込み:こちらからお願いいたします

登壇者プロフィール

<strong>株式会社楓の風 取締役 在宅ホスピス事業部<br>野島 あけみ</strong>
株式会社楓の風 取締役 在宅ホスピス事業部
野島 あけみ
大学卒業後、虎の門病院を経て、区役所の保健師として初めて訪問看護を経験。訪問看護の魅力を知り、以来約30年訪問看護、在宅看護の領域で勤務。2007年に楓の風に取締役として入職。訪問看護ステーション開設、看護師の募集・採用・教育に始まり、関係機関との信頼関係づくり、効果的なチーム運営、効率的な事業所運営等、様々な業務に携わる。
<strong>株式会社楓の風 取締役 企画開発部</strong><br><strong>下手 将裕</strong>
株式会社楓の風 取締役 企画開発部
下手 将裕
大手コンサルティングファーム、会社設立などの経験を経て、フィットネス企業の新規事業開発として訪問看護立上げを担当し2年で10店舗、スタッフ数50名まで成長させる。その後、大手介護企業に入職し、オランダ訪問看護組織ビュートゾルフの日本法人の代表取締役など、約10年間訪問看護事業に経営側として携わる。
<strong>一般社団法人日本PX研究会</strong><br><strong>講内 源太</strong>
一般社団法人日本PX研究会
講内 源太
総合病院入職後、併設する訪問看護ステーションを経験。2019年より有限会社いわきケアフォレストの立ち上げから運営を行う。マネジメント業務を行う中で、「サービスの質」に関心を持ち、一般社団法人日本PX研究会に入会。現在、在宅分野におけるPXの考え方の実践と普及を行う。その他、トレーナー活動や講師活動、ボランティア活動も実践。
<strong>ソフィアメディ株式会社 CQO</strong><br><strong>篠田 耕造</strong>
ソフィアメディ株式会社 CQO
篠田 耕造
公立総合病院、専門病院、地域包括ケアを行う法人で、教育体制や業務プロセス・品質管理に携わりながら、MBA(経営管理学修士)・認定看護管理者を取得。日本看護協会教育委員・学会企画、岐阜県看護協会副会長等を歴任。JNAラダー・教育システム、管理者研修、医療経営セミナー講師など行う。2022年よりソフィアメディCQOに就任。
<strong>モデレーター</strong><br><strong>中川 征士</strong>
モデレーター
中川 征士

セミナー開催に先立って、2022年3月にCS調査に関する対談の場を設けましたので、そのサマリーをお届けします。対談では、在宅療養支援『楓の風』の野島さんと下手さん。ソフィアメディ株式会社からは在宅療養総研所長の中川さんと研究員の吉江さんの4名に語っていただきました。

お客様満足度調査をはじめた経緯

野島さん:
2018年にCS調査を行ったのは、全事業部長が集まる営業促進会議で話題になったことがきっかけです。会議中に、「営業パンフレットの作成で、ありきたりな文言を使うだけではインパクトに欠けるし、私たちが本当に伝えたいことが伝えられているだろうか」という疑問が生じました。自分たちが提供しているサービスについてご利用者様や主治医、ケアマネジャーさんが満足してくださっているかどうか、連携がしっかりできているかを知りたい、リアルな声を聞きたい。そして、それらを自分たちの強みとしてアピールしたいという営業的な視点から、CS調査をはじめました。そこから約2週間でアンケートを作成して送付し、1か月で集計…と、かなりスピーディーに進めました。

中川さん:
私たちソフィアメディは、2018年に経営体制が変わったことが大きく影響しています。2018年から2020年にかけて体制が変わりながらも、新たにソフィアメディにおけるビジョン・ミッション・スピリッツ(VMS)を再構築しました。特にミッションにもある”「生きる」を看る。”を、どのように実現していくかを示した『ぐるぐるモデル』という包括的なサイクルのなかにある大事な項目のひとつが、CSです。

ソフィアメディ株式会社 「ぐるぐるモデル」

お客様ときちんと向き合うためにCS調査を行い、その結果を原点として、教育体制整備や採用、地域連携活動などにも活かしていこうという考え方が、私たちのCS調査をはじめるにいたった経緯です。

どのようにお客様満足度調査をしているか、実装に向けた取り組み

下手さん:
現場で働く人たちが知りたいと思っていることへのアンケートを、現場や回答するご利用者様や関係者には負担をかけないように、シンプルにかつスピーディーに進めました。基本的には本部ですべてできるような形で進めています。調査の対象は当時サービス提供をさせていただいていたご利用者様、ケアマネジャー、医療機関です。当初はすべての対象者様にお送りすることも考えたのですが、コストがかなりかかってしまうこともあり、それぞれ50%を無作為に抽出し送らせていただきました。

株式会社楓の風 アンケート用紙(質問4項目とフリーコメントの構成)

アンケート用紙は、ハガキの裏に質問項目を記載し、そのままポストに投函してもらえるような形をとりました。質問内容やデザインの色は集計がしやすいようにご利用者様とケアマネジャーさん、医療機関でそれぞれ変えています。アンケートの質問項目に関しては、営業戦略会議に参加している役員の医師の意見を聞きながら、最初の会議ですべて決定しました。

デザインは弊社のデザイン専属のスタッフが制作しました。ご利用者様へのアンケートハガキは代行業者を通して、領収書や請求書に同封し、一緒にお礼として弊社のステッカーをつけてお送りしました。ケアマネジャーさんと医療機関に対しては、一部の事業所では手渡しでお渡しすることもありました。

中川さん:
CS調査の質問項目は、私たちがしっかりとビジョン・ミッション・スピリッツに根差したサービス提供をできているか、行動指針や教育などとも関連性を持って回答が得られるようにしました。基本的にはご利用者様の重症度や介護度、ご利用日数などの基本のセグメントと、日本看護協会のクリニカルラダーに沿った看護の核となる実践能力、ネットプロモータースコア(以下、NPS)という推奨度のスコアを参考にし、顧客満足度調査を専門的にされている方々にアドバイスをいただき項目を設けました。

ソフィアメディ株式会社 アンケート用紙(質問18項目とフリーコメントの構成)

何かしらの理由で送付が難しい方もいらっしゃり、不適切な送付が発生しないように注意しながら、ステーションの管理者ともコミュニケーションをとりながら進めました。

お客様満足度調査結果の活用方法

下手さん:
回答数の内訳としては全体で1935件、ケアマネジャーさんが556件、医療機関が475件、ご利用者様が904件になります。集計結果はデータ化をして私たちの意思表明とともにハガキで送付し、社内回覧板、営業用のパンフレットとしてもまとめました。フリーコメントも含めてすべてホームページに載せています。社内では総務の二人で集計などを担当したのですが、リスト作りや送付が一番大変だったと話していました。

株式会社楓の風 HPサービス満足度より

野島さん:
CS調査結果は営業面だけではなく、教育や人材確保・定着、業務改善のためにも活用しました。例えば、看護師によって対応に差がある、担当が変わる不安などの声から、エリアごとに看護師のスーパーバイザーを作り、看護実践のアドバイスができるようにしました。看護師の知識技術向上のためには、看護師全員のELNEC-J修了を目指すなど、教育プログラムの見直しも進めました。

吉江さん:
2020年度はすべてのご利用者様に対して郵送していたのですが、2021年度は7月の時点で請求があった方を対象に、訪問時に手渡しする形で行いました。1万名を超える方々にお送りして回収できたのは4802人、回収率は47.9%でした。CS調査結果はドナベディアンモデルを活用し、ストラクチャー、プロセス、アウトカムという3つの側面から評価し、アニュアルレポート(2021年、2022年版)にまとめて対外的にも公開しています。

ソフィアメディ株式会社 アニュアルレポート2021より
ソフィアメディ株式会社 アニュアルレポート2022より

アニュアルレポートはお客様用に作成し、希望者にお送りしています。社内ではCS調査結果をステーションごと、エリアごとに分析、NPSなどは一覧にしてフィードバックし、ステーションの運営に活用してもらっています。

お客様満足度調査を通して得られたもの、今後の展望

野島さん:
特にフリーコメントの部分では、面と向かっては言えないけれど、ご利用者様が思っていること、考えていることを知ることができました。私たちとしては、そのことを謙虚に受け止め、そして改善点を考えるいい機会になり、得るものは多かったと思います。これからの時代は、ケアマネジャーから依頼が来るだけではなく、ご利用者本人が在宅療養を選び、自分でステーションを選ぶというようになっていくでしょう。その流れを訪問看護ステーション自身が積極的に作っていきたいですね。

下手さん:
訪問看護はすばらしい仕事だと思っているので、この業界をもっと広めたいと思っています。課題の一つには、事業所自体がそれぞれの成功例や失敗例のノウハウを抱え込んでしまっていて、共有できていないこともあげられるでしょう。今回のような対談の機会を設けていただいて、情報をシェアして業界全体でみんなで協力していけたらと思います。

吉江さん:
大きな夢としては、将来的に病院が日本医療機能評価を受けて開示しているように、訪問看護でもそうした取り組みを自分たちでやっていけたらいいですね。CS調査を含めた取り組みの必要性を業界に認めてもらう、そのためにはまずは継続していくことが大事だとあらためて感じました。

中川さん:
医療業界レポートを発刊されているところはまだまだ少なく、ソフィアメディとしてもいろんなところで評価をしていただく機会があり、すごく励みにもなりました。そして、社会のインフラとなり得る責任をしっかり身に受け止めながら、地域の医療機関、施設全体で良くしていこうという考えは、最後まで捨てたくありませんね。そのためのノウハウの開示は積極的に行っていきたいです。在宅医療、訪問看護はまだまだ世に知られていないですし、「もっと早く知っていたら」という課題を減らすためには、もっと一般社会に向けて発信していかないといけないと考えます。本日はありがとうございました。

6月15日(水)の対談・セミナーでは、さらに具体的なお客様満足度の取り組みについてお送りしたいと思います。

イベントタイトル:在宅医療の質をどう評価し、活用するか
日時:2022年6月15日(水)18:30~20:00
方法:オンライン開催(Zoom)
参加費用:無料
申し込み:こちらからお願いいたします