私たちが届ける訪問看護の価値「ソフィアエクスペリエンス」とは

私たちが届ける訪問看護の価値「ソフィアエクスペリエンス」とは

訪問看護を必要とされる方は、年齢や抱えている病気だけでなく、日常生活におけるこだわりや大切にしている価値観もさまざまです。その個別性、多様性が溢れるお一人お一人の暮らしを尊重しながら寄り添い、お客様にとって“「生きる」を看てもらえた、自分の生活・自分の人生を大切にできた。”という体験が生まれること。お客様の「生きる」が充たされるこの体験を、私たちは追求すべき提供価値として「ソフィアエクスペリエンス」と名づけました。

▼「ソフィアエクスペリエンス」についての記事はこちら
訪問看護を通して私たちが本当に届けたい提供価値。お客様の“生きる”が充たされる体験、「ソフィアエクスペリエンス」とは

今回は日々の訪問看護のなかで生み出される体験談から、私たちが目指すソフィアエクスペリエンスとは具体的にどのような提供価値なのか、ステーション管理者と、ステーション支援グループのふたりにお話を聞いてみました。

※こちらは2021年2月発行のアニュアルレポート内インタビューを転載したものです。

選択肢を提示して自分らしい人生を生き抜いていただく

<プロフィール>

■O.Sさん/ 東海 エリアプロデューサー (取材当時:ソフィア訪問看護ステーション名東 管理者兼ソフィアエクスぺリエンス推進グループ看護師)

名古屋市内の高度急性期病院にて5年間、3次救命救急に携わる。他社訪問看護での管理者経験を経て、ソフィア訪問看護ステーション千種の管理者に着任。現在、ステーション名東の管理者を担いながら、名古屋エリア全体の運営支援に従事。

私たちの仕事は「ありがとう」と、感謝の言葉をいただくことが多いです。しかし、看取りの場面では、いくらご家族に感謝されても、あの時の自分の発言や所作は正しかっただろうか、と悩み振り返ることがたくさんあります。でも留まってばかりはいられません。

お客様には「ありがとう」と感謝をしつつ、次のお客様の「生きるを看る」に集中する。私たちの仕事には、相互の「ありがとう」が重要だと思います。

「ソフィアエクスペリエンス」とは何かと考えた時、あるケースを思い出します。

40代女性、ガン末期のお客様。若い頃から腎不全を患い、透析なども行ってきましたが、症状がなかなか寛解しませんでした。もう闘う気持ちになれず、治療はしないという決断をされましたが、なかなか周囲の方々からその気持ちを受け入れてもらえず、困惑されていました。

私もこのお話を伺いながら、「この方は自分をすごく見つめておられる、精神的な部分が成熟されている」と感じたので、この決断は衝動的ではなく、本物なのだろうと思いました。

そこでまず「私たちはあなたを受け入れます。可能な限りの選択肢を提示し、あなたが選ばれたことを支え続けるので、ぜひご自分で選んでください。とにかく私たちが支えますから」とお伝えしました。

するとお客様は「そうやってわかってもらえる人たちと出会いたかった」と、目の前で泣いてくださったのです。

途中で選択が変わってもまったく構わないと伝えましたが、 お客様はそのままスタッフとご家族のケアのもと、最期までとても安らかな時間を過ごされました。

ご自分で選択し、ご自分らしい人生を生き抜いていただく。そのために私たちは常に考え抜きながら行動する。「ソフィアエクスペリエンス」の重要な根幹だと感じています。

直球を受け止める面白さ。お客様の笑顔が励みとやりがいになる

<プロフィール>

■M.Sさん/ ステーション支援グループ/看護師

総合病院(内科・ICU・外来)で勤務した後に、都内で循環器・脳神経外科病院、緩和ケアに従事。その後、他社の訪問看護で勤務し、ソフィア訪問看護ステーション学大・経堂の管理者を歴任。現在はステーションの運営支援に従事。

私の嬉しいことの一つは、ご本人の希望をかなえられた時。 例えば、退院して自宅に戻ったら、行きたい所があるというお客様。でも病状によっては歩けない、外出は難しいケースもあります。

そこをなんとか工夫して、お出かけいただけた時は、ご本人もご家族もとても喜んでくださり、私も嬉しくなる。同行はできませんが、こうすれば負担なくできるかなとか、実現ま での計画を練るのは楽しいですね。なぜ看護師やセラピストがそこまで?と思われるかもしれませんが、意外とちょっとしたことがお客様の生きがいになり、また頑張ろうと思ってくださる。生きる希望につながる一つになると思います。

私は、病院から訪問看護に転職した際、1 週間で辞めたいと言いました。訪問看護の理解も乏しい時期で、一人で行って、一人で点滴をしなければならない。もしうまくいかなかったらどうしよう、誰にも助けを求められないと、あれこれ余計な不安が出てきてしまう時もありました。

でも、上司に「もう少しやってみない?」と言われ、続けるうちに1〜 2 ヶ月でじわじわやりがいを感じることが増えたんです。

人は、病院にいる時よりも自宅にいる時のほうが直球だと思います。“ ありがとう” と言われる時もあれば、わがままになったり、言いたい事を言われ落ち込む時もあったりしますが、人間味が直球で来るという感じで、大変や不安なことがあっても一人の方とじっくり向き合える事が楽しくて。結局人が好きなんですよね(笑)。あれから10数年。今もお客様の笑顔やコミュニケーションをとることが私の励みになっています。

私たちの価値は、病気のことだけでなく、お客様のことを深く理解し、接していくことも、大切な1つのことなのかなと思っています。