訪問看護の真価と可能性、医療人としての成長の場

訪問看護とは、病気や障がいにより自宅で療養されている患者様のもとに、看護師やセラピストなどの医療専門職が訪問し、療養生活のサポートや医療処置を行うサービスです。超高齢社会の進行や在宅医療と地域包括支援のニーズの高まりに伴い、その重要性はますます増しています。
今回は、訪問看護の意義や魅力、またデータから見たソフィアメディの持つ強みについて、CUCグループで事業開発部などの顧問を務める寺島秀夫氏とソフィアメディのQM(クオリティマネジメント)推進グループの田邉政郁氏、村山忍氏にお話を伺いました。

(※記事の内容は2024年9月取材当時のものです。)

寺島 秀夫(医師/事業開発)
寺島 秀夫(医師/事業開発)
支援先医療機関の経営支援(リスクマネジメント支援)、グループ会社の事業データ分析、事業開発部などの顧問を務める。市中病院の外科医として15年勤務した後、筑波大学医学医療系・同大学院 消化器外科学教授、同附属病院地域連携室長・ひたちなか社会連携教育研究センター部長を歴任。大学教授時代、当時の医学界の常識に疑問を抱き、基礎研究、臨床研究に取り組む。「次世代の医療をもっと良くしたい」という信念と共にCUCへ参画。
田邉 政郁(理学療法士/QM推進グループ)
田邉 政郁(理学療法士/QM推進グループ)
ソフィアメディQM推進グループグループマネジャー。理学療法士として勤務後、一般企業を経てCUCグループに参画。在宅事業部にて訪問診療クリニックや医療機関の経営支援業務に従事後、現職。
村山 忍(看護師/QM推進グループ)
村山 忍(看護師/QM推進グループ)
ソフィアメディQM推進グループリーダー。看護師経験25年。ソフィアメディに入社し15年目。総合病院や個人病院に勤務後、訪問看護に携わる。ソフィアメディにおいて2ヵ所目のステーションの管理者や、新規立ち上げステーションの管理者を経験した後、現職。全国を飛び回り管理者をサポートしている。

在宅医療の要、訪問看護の重要性と魅力

寺島 秀夫さん

寺島>
医師として、訪問看護の重要性は日に日に高まっていると実感しています。特に慢性疾患や難病患者様の療養ケアにおいて、訪問看護は不可欠です。現在の医療制度では、慢性疾患や難病患者様が急性期の病院に長期入院することは難しくなっています。急性期の病院では積極的な治療やリハビリが最大の目的であり、病状が安定すれば自宅や施設での療養を勧められるでしょう。そこで訪問看護が大きな役割を果たすのです。

慢性疾患や難病の患者様が自宅で安定した療養生活を送るためには、訪問看護のサポートが欠かせません。また、終末期ケアにおいても訪問看護の役割は重要です。自分が暮らし慣れた場所で、ご家族のもとで最期を迎えたいと考えている人も多いのではないでしょうか。それを可能にするのが訪問看護です。

QM推進グループ 村山 忍さん

村山>
訪問看護の大きな特徴は、お客様やご家族と一対一で向き合えることです。訪問看護では訪問時間のなかでその方の環境やご希望に沿って個別化されたケアを提供します。たとえば、その日のお客様の状況に応じて、ケアよりもお客様の話を聞くことに時間を使うこともあります。お客様の想いや願いに寄り添い、それを実現するお手伝いができるのは、訪問看護ならではの魅力だと思います。

寺島>
そうですね。訪問看護師は、個別化された細やかなケアを提供するといった点において、まさに、人生や生活を含めたその方の「生きる」を看る役割を果たすこともあり、それが訪問看護の強みでもあります。もしも終末期の患者様であれば、最期の願いを聞き、実現するお手伝いができるのも訪問看護の大きな特徴だといえるでしょう。

多様なニーズに応える、ソフィアメディ訪問看護の強み

寺島>
ソフィアメディの訪問看護の特徴について、1万人を超えるお客様のデータを分析した結果、興味深い点が見えてきました。まず、一般的な訪問看護の患者様は高齢者が多いのですが、ソフィアメディでは小児の領域のお客様も多いということです。乳幼児のなかでは新生児の訪問看護が最も多いのですが、ここからは、早産で生まれた赤ちゃんが健やかに成長できるよう、ご家族をサポートしながらケアを提供しているということがわかります。

寺島氏「ソフィアメディ訪問看護 リアルワールドデータ」資料より引用

また、分析したデータには、本当に稀な難病のケースも多く含まれていました。これは、専門的な小児病院からの信頼が厚いことの表れだといえるでしょう。複雑な希少疾患を抱えていても、自宅で安心安全に過ごせるよう、主治医や関係機関と連携しながら、質の高いケアを提供できる能力があるということです。

精神疾患や発達障害の方へのケアも充実しているチーム・組織であることがわかります。こうした方々は、医療や介護、福祉などの制度の狭間に残され、適切なサポートがなければ社会と切り離され自宅に閉じこもりがちになってしまいます。ソフィアメディの訪問看護は、医療的ケアが必要なお客様のみならず、精神疾患や発達障害の方においてもお客様との対話を通じて、生活リズムの改善や認知行動療法的なアプローチを行っています。これは非常に重要なことで、社会復帰への大きな一歩となるのです。

村山>
小児や難病の患者様への対応は在宅特有ということもありニーズが高いものの、この領域を病院で経験したことがある医療者は稀ですので、未経験の方にも安心いただけるよう意識したチーム体制や育成プログラムを導入しています。

専門性やチーム力を活かした中重度患者サポート

寺島>
私はソフィアメディの中重度のお客様への対応にも注目しています。現在、医療依存度の高い患者様であっても在宅に戻るケースが増えてきています。そのような状況にも柔軟に対応するため、ソフィアメディでは認定看護師、専門看護師、特定行為研修修了の看護師など、高度な専門性を持つスタッフが揃っているのも強みのひとつです。このような体制は、在宅での高度医療を可能にし、患者様のQOL向上に大きく貢献しています。

ソフィアメディ コーポレートサイト「専門・認定看護師一覧」より

田邉>
おっしゃる通りです。私たちは、中重度のお客様への対応も、重要な使命だと考えています。そのために、組織やチームでの連携を重視しています。看護師だけでなく、セラピストなど他職種との協働も進めています。また、2024年より自社開発のアセスメントシステムを導入し、お客様の状態や環境の評価の可視化を推進しています。これにより、多職種間での情報共有がスムーズになり、より質の高いケアを提供できるようになりました。システムを用いたアセスメントの可視化・適正化により、適切な介入頻度でケアを提供することに繋がり、お客様にとって安心したケアを届けられると考えています。

充実の教育プログラムと成長支援

QM推進グループ 田邉 政郁さん

田邉>
ソフィアメディでは、新入社員教育にも力を入れています。特に、病院から初めて訪問看護に転職された方向けに、現場のOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を含む1年間の新入社員教育プログラムを用意しています。

具体的には、最初の1〜2ヶ月でお客様の在宅環境に慣れていただき、医療・介護保険制度などの知識を学んでいただきます。その後、緊急時の対応や他職種との連携など、段階的にスキルアップできるよう設計しています。また、経験豊富な看護師への相談体制も整えています。認定看護師や専門看護師にコンサルティングできる仕組みを作り、不安解消やスキルアップをサポートしています。最近では、某大学と共同で訪問診療や訪問看護師向けのトレーニングプログラムも進めています。これはソフィアメディの規模だからこそできることです。

寺島>
素晴らしい取り組みですね。訪問看護は、医療人として成長する絶好の機会だと私は考えています。病院では病気や治療を中心に介入しがちですが、訪問看護では患者様の生活全体を見る力が養われます。これは医療人として非常に重要なスキルです。

ただ、最初は不安を感じる方も多いでしょう。特に、一人で訪問することへの不安は大きいと思います。しかし、実際の訪問看護は決して単独で完結するものばかりではありません。医師や看護師、他の医療職との情報共有や連携、チーム医療が不可欠です。事前に患者様の状態を把握し、リスクに対する対応策を練っておくことで、多くの不安は解消されるはずです。

村山>
私も訪問看護を始めた当初は不安でした。ところが、実際に働き始めてみると、チームでの連携や事前の準備のおかげで、思ったほど怖くないことがわかりました。むしろ、一対一でケアを提供できることにやりがいを感じるようになりました。こうした不安が解消されるように、私たちQM推進グループも一緒にサポートしていきます。

訪問看護で見つける新たな自分、医療人としての成長の道

寺島>
訪問看護は、医療人としての成長に欠かせない経験だと私は考えています。医療現場ではさまざまな制約があるなかで、どうしても病気や治療を中心に見てしまいがちですが、真の医療人としては、病気を診る力と同時に、全人的に『人を看る力』も必要と考えます。訪問看護は、まさにこの『人を看る力』を養う最適な場所です。患者様の生活全体を見て、その人らしさを尊重しながらケアを提供する。これこそが看護の本質ではないでしょうか。そして、この経験は今後病院に戻ったとしても、別の施設に移っても、必ず活きてくるでしょう。

こうした『人を看る力』を身につけた看護師が増えれば、日本の医療全体がより良いものになっていくはずです。訪問看護は決して楽な仕事ではありません。しかし、その分だけやりがいも大きく、成長の機会も豊富です。ぜひ、挑戦してみてください。きっと、新たな自分を発見できるはずです。

[文]白石弓夏 [写真]山田修平

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