「金沢にソフィアメディあり」スタッフ全員が自信を持って訪問看護ができるステーションへ

「金沢にソフィアメディあり」スタッフ全員が自信を持って訪問看護ができるステーションへ

ソフィアメディ訪問看護ステーション金沢西の管理者であるMさんは、「自信を持ってその人の持つ能力や経験を発揮できる環境を作りたい。それを支援をするのが私の役割」と語ります。今回は、石川県初のステーションを2022年5月に立ち上げた管理者のMさんに、ステーションを運営するなかで意識していること、また地域連携活動も含めた訪問看護の課題やこれからについてお伺いしました。

(※記事の内容は2022年9月取材当時のものです。)

■M.Sさん/看護師・管理者/ステーション金沢西

急性期病院に約20年勤め、訪問看護師に転身。訪問看護師としては3年目。2回の転職を経て、2022年にソフィアメディに入職。ソフィアメディ初となる石川県の事業所立ち上げ管理者として、ステーション金沢西の運営にあたる。小学生のお子さん2人のママ。

「その人らしさを追求すること」を考え続ける看護師人生

ーMさんは昔から看護師になるのが夢だったんでしょうか。

いや、実はそうではないんです(笑)。元々「人の役に立つ仕事がしたい」と思い、小学校の教師になることが夢でした。中学生の時、親に「あなたは看護師の方が向いている」と言われ、単純な軽い気持ちで看護師になることを決めました。

ーでも、そこから実際に看護師になられたのですね!

看護師1年目のときに、先輩から「患者さんとしっかり向き合えていてすごいね。患者さん好きだよね。」と言われたことがありました。私には看護師に向いている一面があるんだと教えてもらってから、看護の仕事にのめり込んだような気がします。それまでは、自分が看護師に向いているのか向いていないのか、よくわからなかったんですけどね。

ー訪問看護に転職されたのは、何かキッカケがあったのでしょうか。

一番は家庭の都合で夜勤ありの病院で働くのが難しくなったことです。転職をして仕事もセーブして働こうかなと思っていたんですけど、入ってみたら新しい環境でいろいろとやってみたいと思うことが多くて。スタッフにもすごく恵まれていて、毎日ああしようこうしようとアイデアが出て……。また、自分の看護観である「その人らしさを追求すること」をもっと実現していきたいと思ったのも理由の一つです。病院の環境はどうしても非日常で、それを日常に近づけるためにはどうしたらいいのかと20年間考えてきたのですが、なかなか実現できる環境がなく……。そう悩んでいたときに、学生の頃、訪問看護の実習で、在宅では病院と時間の流れが全然違うと感じたことをふと思い出したんです。

それで、訪問看護にチャレンジしてみようと思いました。そして、気づけば管理者になっていました(笑)。

ー訪問看護二社を経て、なぜソフィアメディに転職されたのですか。

実は紆余曲折あって、一社目は倒産し、二社目は方針が合わなかったためやむを得ず退職しました。

その頃、ちょうどテレビでコロナ禍でのソフィアメディの活動が取り上げられていて、名前を知りました。これまでの苦い経験があったので、実体がしっかり伴っているところで働きたいという気持ちが強くありました。ソフィアメディは研修や教育制度も整備されていて、面接の際も、「楽しく仕事ができそうだな!」と期待が膨らんだので、安心して入社することができました。

ー新たに立ち上げるステーション金沢西の管理者に応募をされたのですか

はい、そうです。元々、教師になりたかったこともあり、人を育てることに自分のなかでこだわりがあります。病院で働いていたときも前職で働いていた時も、学生指導、新人教育やスタッフ教育にも力を入れてきていたので、ソフィアメディでも教育にかかわりたいと思っていました。ソフィアメディでは、主任が主に教育の役割を担いますが、立ち上げステーションということもあり、管理者も一緒になってスタッフ教育を担うと聞いたので、管理者としてやってみようと。ソフィアメディに入れなかったら看護学校の教員を目指そうと思っていたくらい、「人を育てる」ことに仕事で関わっていきたいと思っていたので、ソフィアメディだったら今後もそういうチャンスがあるかもと思いました。

「金沢にソフィアメディあり」住み慣れた環境で生きていくことを支援する、ステーション金沢西

ーステーション金沢西の職場の雰囲気や特徴などを教えてください。

現在(※2022年9月時点)は看護師が私含めて5人、セラピストが2人。20代後半から30代、40代、50代と年齢はバラバラです。私以外のスタッフのほとんどが大きな病院から転職してきて訪問看護は未経験です。地域性もあるのか、社内の他地域のステーションの管理者さんとやりとりをしていると、金沢西は少しおとなしい雰囲気があるのかなと感じます。そんなおしとやかさがありながらも、自分の役割を認知・行動し、目標に向かって頑張っている素敵なスタッフばかり。誰かが困っていたらすぐに支援できるような思いやりのあるステーションだなと思っています。

金沢西のお客様の特徴としては、高齢独居で認知症のお客様が多いかもしれません。金沢市では地域で認知症の方を支えようと取り組んでいます。包括や居宅、訪問看護、民生委員さんと、地域全体でその方にとって一番何がいいのかという目線でやりとりできるので、本当に連携しやすく、住み慣れた環境で生きていく、そうしたところに支援をしたいという話を地域で聞くと、私たちもぜひ力になりたいと思います。

ーステーション金沢西は2022年5月にスタートをきりましたが、目標などはありますか。

開設当初に、どんなステーションにしたいかスタッフみんなで語りあったんですよ。そのときにわかったのは、「金沢に訪問看護を広めていきたい」という想いは全員一緒だということ。みんなの考えを言葉にしてみると「金沢にソフィアメディあり」というビジョンに行きつきました。働く中で様々な課題もあります。だけど、最終的にはやっぱりこの言葉に立ち戻れるような、そんな気持ちでいます。「いつか”金沢にソフィアメディあり”にしたいから、こんな風に考えてみよう」となれるんです。

みんなでこのビジョンを目指しているからこそ、他人ごとではなくて、みんなが自分ごととして課題を共有して、向き合うことができています。

ースタッフからそういった言葉が出てくるのは素敵ですね。Mさんが管理者として何か心がけていること、大切にしていることなどはありますか。

いくつかあります。私は以前の職場に転職した時、これまでの経験を加味してもらえず、ゼロからのスタートだったことがありました。それがずっと自分のなかで引っかかっていたため、これまで積み重ねてきた経験を活かせる職場として、その人が持っている能力をしっかりと発揮できる環境にしたいと思っています。

そして、スタッフがそれぞれに「私はこういうことができます」と自信を持ち、全員が金沢西の顔となっていけるように、全面的に支援していきたいです。

そのためには、ステーションの課題に対して、それぞれがどう捉えて考え行動するか、一人ひとりの役割意識がとても重要になってきます。病院のようにトップダウンであったり、誰かがカバーしてくれる、次の人にお願いしようということがほぼできない状況ですから、自分で完結させることが必要です。何か課題があったときに、訪問看護の経験がある私の解を伝えることは簡単ですが、それでは意味がないので、次のアクションをスタッフがどう考えるかというところを共有し、一緒に考えるようにしています。

また、スタッフがモチベーション高く、自主的に活動できるように支援することも私の役割の一つです。金沢西ではスタッフの理想像を共有する習慣を大切にしています。その理想像に向けてアクションシートに自分の行動計画を書いてもらい、月に1回、チームで進捗を共有しています。これは、本人にとっては実現に向けて宣言するということ、他のスタッフにとってはチームとしてどう支援するかをイメージすることを目的としています。その人がなりたい姿に近づけるよう、楽しく前向きに仕事ができているか?頑張りすぎて疲弊していないか?日頃からそういった視点でスタッフ一人ひとりと毎日コミュニケーションするようにしています。年度末にはスタッフから、なりたい自分になれた、とか、近づくことができた等の発言が聞けたらいいなと思っています。

医療支援の限界を知る、それでもすべての人に訪問看護をゆきわたらせるために

ーMさんが訪問看護師として感じる課題はありますか。

私が当初思い描いていた訪問看護の世界と現実が、全然違うと思うことがありました。例えば、セルフネグレクトが見受けられるお客様がいらっしゃったのですが、行政などの介入があっても医療支援がうまく提供できず、ご本人が通院を拒まれるので、指示書も出せずに訪問看護も強制打ち切りになってしまいました。病院では待っていれば患者様が来てくださいますが、在宅医療はそうではありません。医療支援が絶対に必要なのに、提供することができないという状況を目の当たりにし、医療介入の限界を垣間見るようでした。自分の中で「どうにもならなかったことかもしれないけど、それでも何かできることがあったんじゃないか」と思いました。訪問看護師として働き、はじめて知った世界で、衝撃を受けたことでもあります。

その人すべてを看ていくということは、もっともっといろいろと考えなければならない、勉強しなくてはならない部分があるのかなと、日々感じています。

ー最後に、Mさんが今後実現していきたいことをお聞かせください。

地域で暮らすすべての人に、訪問看護のサービスをゆきわたらせることです。道のりは遠いと思いますが、絶対に地域のインフラとして必要なものだと考えています。同時にスタッフみんなが笑顔でいられる環境をつくったり、「ここでの経験が自分の人生にとってものすごくよかった」と言ってもらえるように頑張りたいですね。今いるスタッフとの出会いには、本当にいいご縁をいただきました。同じ方向を向いて邁進できるこの環境がすごく幸運だと思っています。

ソフィアメディ初のエリアで地域に訪問看護を広めるべく前進するMさん。ステーション金沢西が今後金沢の訪問看護の顔となる日が近い将来に来るかもしれないですね!

[取材・文]白石弓夏・中村  [写真]スタッフ提供