外来での緩和ケアやがん治療技術の進歩など、さまざまな取り組みにより、治療を継続しながら在宅療養することが可能になってきています。病院だけでなく、訪問看護においても緩和ケア、がん看護は切り離して考えることはできません。そのなかで働く緩和ケアとがん性疼痛看護の認定看護師という存在。その役割やそれぞれの専門性、強みについて、ソフィアメディで働く認定看護師のお二人にお話を伺います。
(※記事の内容は2022年5月取材当時のものです。)
看護師・管理者/ステーション青物横丁
看護師/ステーション香芝
訪問看護における認定看護師としての活動、連携状況
──現在、認定看護師としてどのような活動をされていますか。
Mさん(緩和ケア):
私が大阪から東京に来たタイミングで新型コロナウイルス感染症が流行し、正直なところ、まだ思うような活動はできていません。もちろん、ステーション内では看取りのご依頼や相談があったり、緩和ケア認定の資格を見てくださってケアマネジャーさんから紹介していただくことはあります。コロナ禍で機会は減りましたが、ソーシャルワーカーさんとの連携のために、病院の退院前カンファレンスに参加することもあります。病院にいるときと、在宅に帰ってきてからではお客様の様子も全然違うので、退院前から状況を把握することが大切ですね。
大阪では連携病院とのカンファレンスが毎週から月に1回定例で決まっていて、勉強会や症例検討会などの情報もよくまわってきていました。Kさんともそこで一緒になり、顔見知りになりました。ですが、東京ではまだそのような場に参加できていません。Kさんはどうですか?
Kさん(がん性疼痛看護):
うちは大阪の堺で、緩和ケア連携グループ、訪問看護ステーションの管理者グループというネットワークがあり、勉強会の情報はそこからよく来ますね。
Mさん:
大阪の緩和ケア病棟に勤めていたときは、他職種や地域と連携する機会が多く、日々意識しながら取り組んでいました。東京に来てからも、自分としては今までと同じように在宅の医師と情報共有をしていたつもりでしたが「ソフィアメディさんはすごく連携してくれるから助かる」と喜んでいただき、病院での経験を活かすことができています。
Kさん:
私の認定に関する活動としては、お客様のなかでがん性疼痛があるときに直接訪問に伺って疼痛のアセスメントを行い、主治医と薬剤調整のやりとりしたり、ステーション主催の地域のケアマネさんに向けたZoomでの勉強会の講義を担当したりすることもありました。拠点病院も含めて、「みんなで堺を盛り上げよう」という意識が強いように感じます。あとは、緩和ケア領域の学会に参加したり、他ステーションのスタッフからの相談を受けることもあります。
ソフィアメディが大阪で開設したのが2021年からなので、いかに地域に定着させるかというところで、社内でも勉強会などは力を入れて定期的に実施していますね。
それぞれの専門性や強み、共通点
──緩和ケアとがん性疼痛看護、それぞれ専門性や強みについてどのように考えていますか。
Kさん:
私はがん性疼痛看護の認定なので、分野がはっきりしていると思います。がんの痛みがどこから起こっているのか、医師との薬剤調整、お客様に効果的な鎮痛薬の使い方や、薬以外の疼痛緩和の方法をお伝えしています。在宅では、がん以外によって引き起こされる痛みについての症状の相談も多いですね。緩和ケア病棟にいたときは治療期の症状コントロールとして、放射線治療や化学療法、緩和ケアの認定看護師さんや緩和ケア医と関わる機会も多くありました。そのおかげで他領域の専門知識もたくさん教えていただき、今でもその経験を活かしています。診断期から治療期、そして最期まで携われるのが強みかなと思っています。スピリチュアルな部分や亡くなった後のご家族のケアなどは、緩和ケアの認定さんの強いところです。
Mさん:
本来であれば、診断された治療期から関わることができればいいですが、それは病院のがん専門看護師やがん化学療法の認定さんなどが担っていて、訪問看護では看取り、苦痛緩和が多いですね。精神的なケアやスピリチュアルケアも専門ではないかと思っています。
──小児や若い人の緩和ケアにも携わりますか。
Mさん:
小児や若い患者様は在宅ではまだ多くありません。ギリギリまで病院で治療をしているケースが多いので、在宅に帰ってきたら一気にターミナルケアが行われるような状況です。そのなかでも関係性を築き、その方の苦痛をいちはやくキャッチすることが緩和ケア認定看護師ならではの専門性、強みではないかと思います。
──がん性疼痛看護の認定課程は、2020年から新たな認定看護師制度として「緩和ケア」の分野に統合されました。なにか変わることはあるでしょうか。
Kさん:
旧課程で育っている認定看護師の名称が変わるのは私たちの都合であって、お客様には大きな影響はないのではないかと思います。ある意味、旧過程の私たちは名称の強みを活かして残れるのかなと考えています。
Mさん:
私は特に懸念していることはないですね。がん性疼痛に詳しいのは強みですよね。がんに限らず難治性の痛みなどは、本当に解決できないこともいっぱいあるので。これからも共に頑張っていきたいと思います。
──症状コントロールはお二人にとっても共通するところだと思いますが、医師との連携も重要になってきますよね。何か意識していることなどはありますか。
Mさん:
麻薬の使い方について医師に専門的な判断から提案したいけれど、なかなか言いにくいケースがあります。だけど、自分の看護師としての視点やアセスメントとしてはこうですというのは、認定看護師としてしっかりとお伝えしたいと思います。そういうときは、あえてFAXなどの書面で渡すことがあります。文字にすることでワンクッション置いて、整理してお伝えできると思います。
Kさん:
なるほど。上手にされてますね。私の場合は、最初に挨拶で名刺を渡すときに、「あ、認定さんなんだね」と気づいてくださる方は専門的なところも相談しやすいことが多いですね。病院で緩和チームや認定看護師と働いていたことのある方は、そのような反応をいただきます。
また、連携時の工夫として医師に対して「お客様がこうおっしゃっています」と伝えることもあります。その際、お客様の主観的な情報だけではなく、それに対して「私はこのように考えるのですがいかがでしょうか?」のような客観的な情報や認定看護師としてのアセスメント、判断を添えるようにしています。
Mさん:
わかります。私はご家族から医師に伝えていただくように促すこともあります。ご家族も「医師にこんなことを言ったら怒られるんじゃないか」と遠慮している人もいるので、その気持ちを一度受け止めて、後押しをします。
Kさん:
医師たちは毎回訪問できるわけではないので、患者さんがどんな気持ちでいるか、どんなことが日頃気になっているかなど、知りたがっています。それが治療を行う上で必要なことでもあると、お客様やご家族に伝え、全員の情報共有や連携がスムーズになるようにしていくことも、看護師の大事な役割だと思います。
[取材、文]白石弓夏 [写真]岡田紘平、スタッフ撮影
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