アイドルファン界隈から使われ始めたとされる「推し」という言葉。現在では、その対象はアイドルに留まらず、俳優、声優、アーティスト、スポーツ選手、YouTuber、漫画やアニメのキャラクターの他、なかには鉄道や仏像といった幅広い「推し」を持つ人たちがいます。2021年には新語・流行語大賞にもノミネートされており、コロナ禍で憂鬱な毎日を「推し」の支えで乗り切っている方も多いのではないでしょうか。
そもそも「推し」とは何なのか。「推し」とは「他の人にすすめること。また俗に、人にすすめたいほど気に入っている人や物」(デジタル大辞林より)のことを指しています。「推し」とは単純な「好き」では言い表せない、もっとそれ以上に尊さや美しさのような熱い想いがそこにあり、人生を彩る存在とも言えるのかもしれません。
訪問看護を通してお客様の「生きる」を看る私たちですが、そんな私たちの「生きる」を支えてくれる存在が「推し」というスタッフもたくさんいます。この連載では、ソフィアメディで働く人たちの「推し活」事情についてインタビューをしていきたいと思います。
(※記事の内容は2022年6月取材当時のものです)
今回の「推し」は…
第4回目は、「たい焼き」を愛してやまない採用グループのTさんに「沼に落ちたキッカケ」や「推し事」についてお話を伺いました。
*推し活に関する表現
「沼に落ちる」・・・深くハマること
「推し事」・・・推しに関するファン活動全般
多くの人が一度は口にしたことがあるであろう「たい焼き」は、江戸時代に今川焼き(大判焼き)から派生した東京発祥の食べ物だといわれています。その場で食せる庶民のおやつとして親しまれてきました。ファンの間では、たい焼きの焼き方によって呼び方が変えられています。1匹ずつ焼き上げる方法を「天然物」「一丁焼き」「一本焼き」と呼び、鉄板などで複数匹を一度に焼き上げる方法を「養殖物」「連式」などと呼びます。最近では、前身の今川焼き(大判焼き)の様に、餡に替わってクリーム、チョコレート、キャラメル、カスタードクリームなどの洋菓子素材を使用したものや、サンドウィッチ式に肉類や生野菜、各種ソースやリゾットなどを挟む「おかずたい焼き」も提供されるようになりました。
それでは、Tさんがたい焼きを推し始めたきっかけや、推し活事情についてお聞きしていきたいと思います。
たい焼きとの出会い、推し始めたキッカケ
──まずは自己紹介をお願いします。
現在、採用グループで母集団形成から求職者の選考管理、面接調整、入社の手続きなどの事務作業全般まで担っています。
もともと訪問看護とは縁があり、私が幼いころから母親が訪問看護師として働いていました。ソフィアメディを知ったキッカケは、派遣会社からの紹介です。実は、他のところと併願で受けていましたが、面接の対応をしてくださった方の人柄に惹かれて、ここに決めました。先日、年に一度開催されている「経営方針共有会」に参加した際に、ソフィアメディで働く人たちのあたたかさに驚きました。
今まで派遣でいろいろな会社を経験してきましたが、ソフィアメディで働くひとりのスタッフとして恥じないように精進しなくては!と思っています。
── では、早速ですが、Tさんがたい焼きを推し始めたきっかけは何ですか?
中学生の頃に好きだった歌手が「たい焼き好き」で、それを知っていた母が、ある日、大量のたい焼きを買ってきてくれました。食卓に並べられたたい焼きは、クリームや紫芋餡など様々。とてもテンションが上がったのを覚えています。それが、記憶に残るなかでは一番古いたい焼きの思い出です。
うちの家族は母や妹もアニメ好きで、家では昔から「推し」について語りあう風潮がありました。一つのものにハマる性格は、母親譲りなのかもしれません。
──家族内でそれぞれの推しについて熱く語れるのはとっても素敵なことですね! 推しの歌手が好きだったことから始まった「たい焼き」熱が、より加速していったのはいつ頃だったのでしょうか?
高校生の時です。学校の最寄り駅にたい焼き屋さんがあったので、週に1〜2回は通っていました。そのお店には、つぶあんやカスタードなどの定番メニューだけではなく、様々な変わり種や季節限定メニューもありました。そのため、「見逃してなるものか!」と、学校帰りに通いつめましたね。
もともと人見知りをするタイプなので、店員さんに「また来た…!」とバレないように、いつも髪型を変えて通うのがもう大変(笑) 。 軽音部の仲間と行ったり、ときには一人で通うこともありました。
──当時通っていたお店について詳しく教えて下さい。
お店は、駅ビルに入っていて「くりこ庵」といいます。当時は10日ごとに新作がでていたので、新しいメニューを見たり食べたりするのが楽しみでした。
またスタンプカードがあったので、それが通い続けるモチベーションになっていました。たい焼き1個につき1つスタンプが貰えるのですが、20個集めると全てのメニューの中から1つたい焼きと交換できるんです。
そのため、高校生ながらに頭を働かせ、安いたい焼きやポイント2倍デーに通うことでポイントを稼ぎ、交換する時には普段は手を出しづらい高級たい焼きを注文していました。種類はたくさんあるのですが、最近はチョコミントにハマっています。
バイトではたい焼き屋を掛け持ち!?たい焼きファン用語の養殖・天然とは
──高校卒業後は、推し活はどのようにすすめられたのですか?
たい焼きへの愛が溢れすぎて、高校卒業後はアーティスト活動をしながらたい焼き屋さんとたい焼き屋さんの掛け持ちバイトを始めました。いわゆる「養殖物」と呼ばれる6匹一気に焼くお店と、「天然物」と呼ばれる1匹ずつ焼き上げるお店2箇所を経験しました。
天然物は火を使って焼き、養殖物は電気を使って焼きます。火を使う天然物は鉄板温度200度に設定されており、温度管理が重要とされていました。仕上がりも違いがあり、天然物の方は薄皮でパリッと、養殖物の方が少し厚めのもっちりとした生地でした。好みが分かれることもありますが、私はどちらも好きでしたね。
──バイトをするなかで、印象に残っているエピソードはありますか?
バイト先のお店はどちらも都心の方にありました。ある夏の夜、一人で営業をしている時に、汗でビショビショになった方が来店されました。ジム帰りだと爽やかに話すその方は、なんとテレビでよく見かける芸能人。天然物を2匹買って、笑顔で帰っていかれました。その方もたい焼きが好きなんだと思うと、とても嬉しかったのを覚えています。
その後、仕事の都合上、たい焼き屋のバイトは泣く泣くやめることとなりカスタマーサポートに転職しました。しかし、たい焼きへの愛はむしろ高まり続けました。
たい焼きを軸に広がる輪
──カスタマーサポート時代は、どのような推し活をされていたのですか?
職場に「たい焼き部」を作りました。たい焼き好きということが徐々に知られてゆき、普段は食べない人も仕事帰りに食べ歩きに付き合ってくれるようになりました。休日にも集まり、食べ歩きツアーを開催することもありました。もちろんたい焼き部の部長は私が務めました。
──職場の方々がTさんの「たい焼き好き」に気づいたきっかけは何だったのですか?
実は、私のスマホケースはたい焼きの食品サンプルなんです。5年程前にネットで発見し、一目惚れで即購入。以降、ずっとこのタイプのスマホケースを使用しています。少々分厚く重みもありますが、たい焼き好きにはたまりません。仕事で疲れた時にこのスマホケースを見ると一気に元気がでます。また、このスマホケースをきっかけに、職場の人もたくさん話しかけてくれるようになりました。もともと人見知りで自分から話しかけるのが苦手なので、自分を表現するためのツールとしてとてもお世話になっています。
──人との会話のキッカケ作りを担ってくれているのですね! 実際にソフィアメディ内のスタッフも、何人かスマホケースをきっかけに話かけてくれるようになったと伺いました。「たい焼き」から広がる輪、素晴らしいですね!
実はまだたい焼きにまつわるエピソードがあります。私、「たい焼きの曲」を作ったんです。もともとアーティスト活動をしていたのですが、自分が作る曲はどうしても暗めになってしまうので、周りから明るい曲を作ってほしいと要望がありました。
「どうやったら明るい曲が作れるだろうか」と考えた時に、自分を明るく幸せにしてくれるたい焼きのことを一番に思い浮かべました。「そうだ、たい焼きの曲を作ろう!」私は早速、たい焼きに対する愛を書き綴りました。そしてそこにメロディが加わり、たい焼きの曲が完成。
その曲は、ツイキャスというライブ配信サービスで配信しました。そこで素敵な出会いがあります。たまたま見にきてくれていた方の中に、岐阜県のたいやき屋さんがいたのです。その方は曲を非常に気に入ってくださり、なんとお店で流してくれることになりました。実際にお店にも伺いましたが、私の曲が流れていました。この時は嬉しかったですね。
──SNSで繋がる輪もあるのですね。 たい焼き好きが転じて曲が生まれてしまうなんて、凄すぎます!
SNSって面白いですよね。私も、全国のたい焼きに関する情報はすべてSNSから収集しています。例えば、Instagramには「#たい焼き」を登録しているので、いつも勝手に情報が流れてきます。Twitterでもたい焼きに関する情報は常にキャッチアップしているので、情報はいつもアップデートされています。
たい焼き求めてどこまでも
──今後、推し進めたい活動はありますか?
全国の「たい焼き屋さん巡り」をしたいです。北海道の十勝あんこのたい焼きや、福島、京都をはじめとした各地域にも美味しいお店がたくさんあります。そのお店を一軒一軒まわってみたいですね。仲良しメンバーで食べ歩きするたい焼きは、最高に美味しいと思います。
──最後に、愛してやまない「たい焼き」を生産してくれている全国のたいやき屋さんに向けて、メッセージがあればお願いします。
夏場は閑散期なので、たい焼き屋さんの存続が心配です。私のようにたい焼きを求めている人はたくさんいますので、暑さに負けず、たい焼きを焼き続けて欲しいと思います。感染症の影響で大変な部分もあるかと思いますが、なんとか踏ん張ってもらいたいです。たい焼きを求めて、あなたのお店にも伺います!
[取材・文]河村由実子 [写真]本人提供
この連載では、ソフィアメディで働く人たちの「推し活」事情についてインタビュー をしています。「私の推しの話も聞いてほしい!」という方がいらっしゃいましたら、このSophiamediAトップページ下部にある『返信不要のご意見箱フォーム』にお名前・所属先・推しを記載し、投稿いただければと思います。