小児科出身の男性看護師が目指す、理想の訪問看護

「訪問看護をやりたい」という気持ちは同じでも、そこに至るまでの経緯や、訪問看護を通じて叶えたいことは人それぞれ。訪問看護師が10人いれば、そこには10通りのストーリーがあります。

ステーション名東で活躍中のSさんの場合、幼少期に経験した入院生活が、看護師を目指すキッカケとなりました。そして現在はご自身の経験を活かし、東海エリアで訪問看護の小児チームを盛り上げようと積極的に活動しています。

自分の芯を強く持ち、夢に向かって突き進むSさんにインタビューし、理想の訪問看護について語っていただきました。

<プロフィール>

■S.Mさん/看護師・管理者/ステーション名東勤務

子どもの頃に病気で数ヶ月入院したことをキッカケに、医療職を目指す。大学病院の小児科で6年勤務したのち、ソフィアメディへ。ステーション名東にて、小児チームの立ち上げに携わる。入社2年目の現在、管理者としても活躍中。趣味はバンド、カメラ、車など。今も大学時代の友人とバンドを組んでライブ活動などを行っている。

入院を経験した子ども時代。自然と「患者に一番近い職業」を目指すように

──まずは、そもそも看護師を目指した経緯を聞かせてください。

Sさん:自分が小学校3〜4年生の頃、インフルエンザにかかって痙攣を起こし、救急車で運ばれたことがあります。その後、大きな病院でいろいろな検査を受けた結果、生まれつき体の一部がまったく機能していないことが分かったんです。

当時は何ヶ月か入院し、退院後も毎年検査で定期的に入院していたので、白血病やがん、骨肉腫など、いろいろな病気を持つ子と仲良くなりました。でも、自分が成長していくにつれ、周りの友達が先に亡くなっていく現状を目の当たりにして…。子どもの頃から医療や命の重さに触れる機会が多く、知らず知らずのうちに医療職を目指すようになったみたいです。

最初は医師を目指していた時期もありましたが、自分の中では入院中に看護師さんから優しくしてもらっていたイメージが強く、また「患者さんに一番長く接する職業だから」という理由で、最終的に看護師を選びました。

──その原体験が、大学病院の小児科勤務へとつながっていくわけですね。

病院での葛藤から生まれた、小児の訪問看護への興味

──では、大学病院の小児科を出て、訪問看護の道に入ったのはなぜでしょうか?

Sさん:採用グループのマネジャーからの紹介がキッカケです。彼とは看護師免許を取るために通っていた学校の同級生でして。歳は9才か10才離れていましたが、3年間一緒に勉強やプライベートで共に過ごし、兄のように慕っていました。

その方に「訪問看護やらない?」と誘われ、兄貴が言うなら間違いないと思い(笑)、ソフィアメディへの入職を決めたんです。

──訪問看護にはもともと興味があったのですか?

Sさん:最初は大学病院の小児科が楽しくて、「まだまだこっちをやりたい」と断っていました。でも、小児がんなどで亡くなる子も多く、家に帰してあげられないことで歯がゆい思いもしていて…。「小児の訪問看護をやってみたい」という思いを持ち始めていたんです。そのタイミングでその方に「ウチで小児チームをつくったらいいじゃん」と言われ、そのときに転職の決意を固めました。

ひとりの人間として、お客様と深く関われるのが訪問看護

──Sさんが思う、訪問看護ならではのやりがい・厳しさについて教えてください。

Sさん:病院の看護は、1日に何度もお部屋に出入りして、頻回にコミュニケーションをとることで少しずつ信頼関係を築いていくスタイルです。一方、訪問看護は30分枠・1時間枠などのまとまった時間で訪問するので、1回の介入で色濃くいろんなお話ができます。毎週決まった時間に訪問するので、「今日も来てくれてありがとう」と心待ちにしていてくれるお客様も多いです。一看護師としてではなく、ひとりの人間として関われているなと実感しています。

一方、病棟なら分からないことがあってもちょっと先輩に聞いてすぐ戻ってきたり、先輩に一緒に来てもらったりできますが、訪問看護はその場に一人。お客様と1対1、または1対ご家族のコミュニケーションの中、一人でいろんな状況に対応しなくてはいけません。もちろん、ステーションに電話して相談することはできますが、それでもその場における一瞬の責任の重さはひしひしと感じますね。

子どもたちの笑顔を守りたい。東海エリアで、小児チームの盛り上げ役に

──次に、現在のお仕事について簡単に教えてください。

Sさん:入職して1年間はスタッフとして働いていましたが、今年の4月から徐々に管理業務を引き継ぎ、10月から正式に管理者になりました。

朝はできる限り他のスタッフさんたちが来る前に出勤して、体調不良などによるスケジュール調整にも柔軟に対応できるように待機。日中は自分も1日3件ほど訪問しつつ、新規の契約にも伺うので、今は事務所にいない時間のほうが長いですね。合間に新入職の方をフォローしたり、ケアマネジャーさんからの電話に対応したりしていると、あっという間に1日が終わります。

──ご自身がやりたかった「小児チーム」は、どうなりましたか?

Sさん:入職当初はまだ小児のお客様が一人で、とてもチームとは言えない状況でした(笑)。でも、セラピストさんにも小児経験のある方がいて、「一緒に盛り上げよう」という話になりまして。情報共有をしながら、少しずつ「小児に対応できる看護師とセラピストがいる」とアピールして地域に周知し、そこから10人くらいにまで小児のお客様が増えました。

今は他のスタッフにも横展開しながら、全員が小児のお客様の元にも行けるようにステーション全体で取り組んでいるところです。また、東海エリアの他のステーションでも小児のお客様の受け入れが増え、その際に個別に相談してくださる方も増えました。「東海エリア全域で、小児の情報共有をしましょう」と動いているチームもあり、小児看護への取り組みが活発になってきています。とても良い傾向だと感じていますし、これからもっともっと盛り上げていきたいですね。

──今後叶えたい目標や夢があれば、教えてください。

Sさん:やはり自分のベースにあるのは小児看護なので、一番の願いは「すべての子どもとパパママの笑顔をお守りすること」です。これはもはや自分の使命だと勝手に思っています。

その軸は病院時代から変わらないのですが、ソフィアメディに来てから成人の方とも接する機会が増え、「自分が関わるいろんな人の笑顔を守りたい」と思うようになりました。僕たちが介入することで、「病院を退院し、どうしたらいいか分からない…」と不安になっている方を少しでも減らし、ご自宅で安心して過ごしていただけるようにサポートしていきたいです。

──小児看護というご自身の「芯」を強く持っていらっしゃるのが印象的だったSさん。今後は東海エリア全体をさらに盛り上げていってくださることを期待しています。素敵なお話をありがとうございました!