誰一人不安にさせない。スタッフ全員で作る居心地の良いステーションとは

誰一人不安にさせない。スタッフ全員で作る居心地の良いステーションとは

ソフィアメディは「安心であたたかな在宅療養を日本中にゆきわたらせ、ひとりでも多くの方に、こころから満たされた人生を。」を掲げており、現在70の訪問看護ステーションを運営しています。そして、ステーションの数だけ様々なキャリアや個性、そして志をもった管理者がいます。

今回、お話を伺ったのはステーション小竹向原で管理者を務めるOさん。管理者としてどのような想いでステーションの運営を行っているか、チームづくりの秘訣は何かについてお答えいただきました。

<プロフィール>

■O.Yさん/看護師・管理者/ステーション小竹向原

東京都練馬区出身。急性期病院、看護学校教員、訪問看護ステーション管理者、医療法人理事、同医療法人統括部長と幅広い経験を積む。前職では、訪問看護未経験ながらも管理者としてステーションの立ち上げに尽力する。その時に味わった苦労や不安をスタッフにはさせたくないという想いを大切に、現在ステーション小竹向原で管理者を務める。趣味は園芸、人形収集。

(※記事の内容は2022年4月取材当時のものです。)

訪問看護未経験での管理者。試行錯誤の毎日

──病院や訪問看護ステーションの管理者以外にも看護学校の教員や医療法人の理事・統括部長と幅広いキャリアですね。

Oさん:いろいろ経験させていただきました。

──ソフィアメディに入社される前にも他の訪問看護ステーションで管理者をされていたんですね。

Oさん:クリニックが提供する「みなし指定訪問看護」に勤めていました。働き始めて3~4ヵ月経ったときに訪問看護ステーションとして運営することになりました。その際、管理者を任されたので簡単に引き受けてしまいましたが、訪問看護も未経験だったので実際にやってみるとものすごく大変でした。

初めの頃は、介護保険や医療保険の違いもよくわかっておらず、失敗ばかりだったのでスタッフにはたくさん迷惑をかけてしまいました。

──当時、スタッフの方は何人いらっしゃったんですか?

Oさん:私の他に看護師が3名いましたが、全員訪問看護が未経験というチームでした。医療事務の方も法人内の別の訪問看護ステーションと兼務されていたので、レセプトの時期はあっちもこっちもやることがあって大変そうでした。

──未経験で始められた訪問看護はいかがでしたか?

Oさん:当時は訪問看護ステーションがそんなに多くなかったので、地域からの需要がすごくありました。開設の案内を出すと近隣の病院からたくさん紹介をいただきましたし、併設しているクリニックからも依頼があるので、一気に利用者さんが増えていきました。

開設したばかりで仕組みが整っていなかったので、一人でオンコールを受け持ったり、遅くまで仕事をすることが多く、ものすごく大変な日々でした。

医療事務の方は兼務されていて、常にステーションにいるわけではないので、電話対応も自分たちでしなければいけませんでした。当時、車で訪問をしていたので運転中は常にインカムを付けてすぐに電話に出られるようにしていました(笑)。病院からの依頼や利用者さんの体調が変化した際の緊急対応をしながら、訪問に行くということが1年くらい続きました。

それから少しずつ業務に余裕が出てきたので、業務マニュアルを作ったり、ステーションの体制などを整えていきました。やはりルールをしっかりと決めておかないと、スタッフの中でやり方がバラバラになってしまうので。

──それだけ業務が忙しい中、どのようにスタッフの方々とコミュニケーションをとっていかれたんですか?

Oさん:昼休みは全員時間がバラバラで会えないことが多いので、朝と夕方は必ず話そうと決めていましたが、最初の頃はその時間を確保することすら難しかったです。それぞれが業務に慣れていくうちに、朝礼やミーティング、カンファレンスの時間を作り、コミュニケーションをとる重要性をお互いに認識してできるようになっていきました。

──そこから医療法人の理事に進まれたのはどのようなキッカケからですか?

Oさん:当時勤めていた法人内では様々な課題があり、中でもスタッフやチームのマネジメントが行き届いていないということがありました。当時の事務長から「訪問看護ステーションの立ち上げや体制づくりの経験を活かして、法人全体の体制づくりも手伝ってほしい」というお話があり、それも深く考えず引き受けてしまいました。

事務長、事務部長に助けてもらいながら、全員で体制づくりを進めました。理事を務めたのは2年間になりますが、最終的にはスタッフの配置を見直したり、ルールづくりを行ったことで各チーム、そして法人全体としてのまとまりが出てきました。

──すごいですね!なかなか大変な役割だったと思いますが、どのようなモチベーションで乗り切られたんですか?

Oさん:初めの頃はすごく大変で「もうやめたい」と思いましたが、やっていることに慣れてきたり、業務が落ち着いてきた時に感じる実感や達成感が嬉しいんですよね。それがあるから「新しいことにチャレンジするのはすごく大変だけど、その先にはきっと上手くいって達成感を味わうことができる」と思うと頑張れます。

再び訪問看護の現場に戻る。ソフィアメディを選んだワケ

──2年間理事を勤められた後、ソフィアメディに入社されていますが、また医療現場に戻りたいというのはいつ頃から考えられていたんですか?

Oさん:理事や統括部長として現場から離れて気づいたのですが、やりがいをすごく感じるのはやはり訪問看護の現場でした。それでいろいろと調べていく中でソフィアメディへの転職を決めさせていただきました。

今までは自分で調べたり勉強しながらチームを作り上げてきたので、今度はしっかりと制度や仕組みが整っている職場で働きたいという気持ちと、独学でやってきた自分がどこまで通用するのか試してみたいという想いから、2020年8月にソフィアメディへ入社しました。

──ステーション小竹向原を担当している地域連携推進グループの相談員さんから「Oさんの強みは地域からの依頼を断らないこと。Oさんにお願いすれば大丈夫という安心感がある。」と伺いました。

Oさん:そう言っていただき、ありがたいですね(笑)。

前職のインカムを付けながら訪問していた経験が活きているのかもしれません。医療機関やケアマネジャーさんからの依頼を一度でも断ってしまうと次の依頼はなくなってしまうかもしれない、ということを考えています。例えば、土曜日に電話がかかってきて「明日から訪問することはできますか?」という依頼があると、スタッフの出勤人数やスケジュールの兼ね合いもあって難しいことが大半です。しかし、そのような難しい依頼をお引き受けすることで、また次につながることがほとんどだったりします。

それに、相談員さんが病院や居宅介護支援事業所を回ってくださっているおかげでご依頼をいただいた、と思うと断るのは申し訳ないですよね。

──一つの出来事から振り返りをして、次に活かすというサイクルをすごく意識して回されていますね。

Oさん:今回こうだったら次はどうなるかな?というのが癖になっているのかもしれません。急性期病院では重症の患者様が救急車で運ばれてきて、一刻を争う状況なので瞬時に課題の整理、適切な処置が求められます。その時の積み重ねが活きているのかもしれませんね。

「ステーション小竹向原」というチームの魅力

ステーションでも5つの行動指針を作り、朝礼で読み合わせている

──Oさんが入社された頃と比べると、スタッフ数もかなり増えて大きなチームになってきたのではないでしょうか?

Oさん:私が入社した頃は、まだステーション光が丘の分室という形だったので、看護師は私の他に3人、セラピストは2人と小規模のステーションでしたね。2020年11月にステーションが指定化され、そこからスタッフの数も徐々に増えて、今では看護師が8人、セラピストが4人となりました。

──今でこそ大きなチームとなって落ち着かれているかと思いますが、当時どのような大変さがありましたか?

Oさん:ソフィアメディに入社してまず驚いたのがスタッフの年齢層でした。20代で訪問看護に転職される方が多く、臨床経験の少なさと訪問看護未経験という部分をどうサポートしていくかを考えてました。

初めの頃は、お客様の家に上がってからどういうことをするのかという基礎的な部分から教えていかなければいけませんでした。次第に訪問自体は問題なくできるようになってきましたが、お客様の体調が急変した場合ではどうしていいのかわからないという課題があったので、そういう時には私に相談の電話がよくかかってきました。

例えば「お客様がこのような不安を仰っているのですが、どうしたらいいでしょうか?」という相談があった際には、「もしかしたら、そのお客様は訪問してほしいのかもしれないよね。だから『訪問行きましょうか?』という一言を聞いてみて」と伝えています。不安で電話をかけてきてくださるお客様は、訪問に来てもらいたいと思っていても口に出すのを躊躇っていることが多いんですよ。だからお客様にその一言を確認すると「お願いしてもいいですか?」と返ってくることが大半なんです。そして、次に同じような場面に遭遇すると私への相談がなくてもスタッフが「伺いましょうか?」と言えるようになっているんですよ。

──Oさんのマメな指導もありますが、スタッフの方々の吸収力がないと変わらないですよね。

ステーション小竹向原のスタッフはみんな素直で、教えたことはスッと入っていくんですよ。だから、初めは一つ一つ教えていかなければいけなかったのですが、素直に受け止めてくれるので、一度伝えれば解決することが多かったですね。今でもどんどん成長しながら頑張ってくれているので、その素直さに助けられています。

──ステーション内の雰囲気はどんな感じですか?

Oさん:ステーション小竹向原を利用してくださるお客様が増えてきたので、多い日には1日の訪問件数が7件と忙しいはずなのに、ステーションに戻ってくるとそれを感じさせない空気感なんですよ。みんないい意味でまったりと落ちついているので、仕事に追われている感がないんです。だから、私自身穏やかな性格ではないのですが、あそこにいると居心地が良くてすごく癒されています。

──管理者として、どのようなことを意識しながらスタッフのみなさんと向き合っているんですか?

Oさん:前職の経験がすごく影響していますが、ルールや体制が整っていない中、毎日試行錯誤しながら訪問をしてきた自分としては、同じような苦労をしてもらいたくないと思っています。

また、訪問中はスタッフが一人でお客様のところに向かうため、孤独を感じやすかったり、適切な判断や対応ができているか不安に感じ、離職につながってしまうこともあります。そうならないためにも、土日や夜間に関わらず「困ったらいつでも連絡していいよ」とスタッフには伝えています。

不安の解決のために最近ではマニュアルをスタッフ全員で分担しながら作りました。例えば、他職種との連携の仕方がわからないということが多かったので、「こういう時にはケアマネジャーに連絡をする」「主治医への報告はこのように行う」のようにルールを決めていきました。

人によってやり方が変わってしまうことを防ぎ、新入社員が入ってきてもこれを見れば困らないようにということを目指しています。

──ものすごく幅広い業務が網羅されていますね!普段、訪問業務もあってお忙しいと思いますが、こういうステーション運営に関する業務もしっかりとできるのは、チームとしての一致団結感があるからですね。

Oさん:そうですね。スタッフと面談をしても「スタッフの仲がいいので、仕事をしていてもストレスを感じない」という声がほとんどです。最近ではみんなが業務に慣れてきたので、それぞれがリーダーシップを発揮しながら協力し合っている姿をよく見かけます。

──もともとチームの雰囲気が良かったとのことですが、マニュアルを作るという作業を通してより一層チームの一体感が増していそうですね!

Oさん:お客様やご家族から感謝のお言葉をいただくことがありますが、スタッフが協力して全員で一人のお客様に向き合い、良い結果となった際には最高に嬉しいですね。

開設から約2年経つステーション小竹向原。今ではスタッフ数も増え、チームとして高い成果を継続的に出しているステーションへと成長しており、隣接のステーションとも連携しながら練馬区だけでなく豊島区や板橋区、中野区と幅広い地域の在宅療養を支える存在となっています。しかし、初めの頃は訪問看護経験のないスタッフが多く、チームとしてなかなか成果が出ない状態が続いていたようです。そのような状態からチームがここまで成長できたのは、Oさんの「スタッフを不安にさせない」という想いと、その想いを素直に受けとめてしっかりと学んできたスタッフのみなさんの存在があったからです。ステーション小竹向原のチーム力の秘訣を知ることができました。

[取材・文・写真]岡田紘平