第1回 今後の社会背景と訪問看護のニーズの高まり

第1回 今後の社会背景と訪問看護のニーズの高まり

はじめに

地域包括ケアシステムが重要視される中、在宅医療に興味のある看護師やリハビリテーション専門職(以下、セラピスト)も多いでしょう。

そんな皆様に向けて、理学療法士の視点から今後の在宅医療・訪問看護に求められることを4回にわたって解説いたします。第1回は、社会的背景を踏まえて在宅医療のニーズの高まりについてです。

次回以降の連載予定

第2回:訪問リハビリテーションと訪問看護の違い

第3回:訪問看護で働くセラピストに必要な能力とは

第4回:看護師と連携の必要性

※現時点での予定ですので、変更する場合がございます。

〈ライタープロフィール〉

 

2025年に向けた地域包括ケアシステムを理解しよう!

2025年に向けて地域包括ケアシステムの構築が進められているのは、耳にしたことがあるでしょう。超高齢社会において、「要介護状態になっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供できる体制を構築する」ことであります。2025年というと、あと3年に迫ってきています。では、なぜ2025年なのかご存じでしょうか。それは、「団塊の世代」と言われる1947~1949年に生まれた第2次世界大戦後のベビーブームに生まれた世代が、2025年に75歳以上の後期高齢者になるからです。75歳以上になると病気等による医療費を多く使い、介護をうける人が増えることもデータで示されています。そのため、2025年以降医療・介護費の急増するなかで社会保障制度の持続可能性が求められ、それに向けた医療介護サービスの整備が進められています。

もう一つの視点として、少子化が進んでいることです。ただ単に、高齢者が増えるだけであれば、新たに病院や介護施設を多く作り、これまでの医療介護制度を続けていても問題がないでしょう。しかし、少子化による人口減少が進んでおり、高齢者の増加は、中長期的にみると一時的であり、2045年頃からは高齢者数も減少に転じるとされています。そのため、いわゆる支える側である若い世代の社会保障の負担は増え、また無限に医療・介護施設を新たに作っても、数十年後にはそれらを利用する人が減少することになります。そのため、地域医療構想といわれる、病院等の全体数と役割を調整しながら、在宅医療の整備を進めることで効率的な医療体制を構築することも重要となります。極端な例ですが、医療が必要な高齢者数が2倍になったとしても、現在の医療機関での入院期間を2分の1にすれば、病床数を増やさなくても済みます。このように、病床数を調整し、急性期病院の在院日数を短くし、通院(外来)や在宅医療でフォローアップする方針で政策が進められています。

 さらに、高齢者の単身世帯や夫婦のみの世帯が増加しています。これは高度経済成長以降、核家族化が進み、子どもの進学・就職に伴い一人暮らしをはじめ、結婚しても実家には戻らないといったことが主な要因です。一昔前であれば、3世代同居の家庭も多く、両親に介護が必要になってもお嫁さんが主婦で面倒を見るということもできました。しかし、核家族化、女性の社会進出もあって、老老介護や孤独死の話題は随分前から問題になっています。こういった状況において、在宅での介護サービスの重要性は高まっています。

地域包括ケアシステムにおいて、住み慣れた地域で暮らし続けていくためには、在宅医療・介護サービスは非常に重要になります。

キーワードは在宅医療!その特徴とは!?

高齢者は複数の慢性疾患を併発しやすい傾向にあります。例えば、脳卒中の患者のリハビリを担当していても、高血圧、糖尿病、心疾患、関節症など慢性疾病が併発していることは多く経験するでしょう。75歳以上の約6割が3疾患以上の慢性疾病があるというデータもあります。これまで、医療の世界では各臓器別・疾病別の専門医をはじめとしたスペシャリストが求められ、様々なエビデンスの蓄積がされ、ガイドラインの作成など医療は発展してきました。これにより、疾病の完治・延命が可能となりましたが、高齢者になると慢性疾患の併存し、さらにそれらは超高齢になれば重度化していきます。在宅医療では、これらを複合的に対応できるジェネラリストの面と、重度者にも対応できるスペシャリストの面の両面が求められます。

さらに、ターミナル(終末期)ケアをどのように対応し、看取りをどのようにするのかも課題となっています。高齢者の医療・介護のニーズの拡大の先には多死社会が待っているのです。現状では、約8割の方が病院で亡くなっています。しかし、日本人の約6割が終末期の療養場所を「自宅で療養したい」と回答しています。(注1)地域包括ケアシステムの概念にあるように、「最後まで住み慣れた地域」を達成するためには、在宅医療の中で最期の看取り、終末期のケアが求められています。

在宅医療では、慢性疾患の複合疾病、重症者、ターミナルケア・看取りといった役割が期待されています。

訪問看護に求められていることは?

 このような背景の中で、2025年に向けて医療保険の診療報酬改定が2年に1度、介護報酬改定が3年に1度行われ、地域包括ケアシステムの構築、在宅医療・介護サービスの充実に向けた政策が進められてきています。特に訪問看護は、在宅医療の要として看護師等が行う療養上の世話や診療の補助が行われます。訪問看護のサービス提供は、「病院・診療所」と「訪問看護ステーション」の両者から行うことができ、また利用者の年齢や疾病、状態によって医療保険または介護保険の適応がされ、小児から要介護者、看取りまで訪問看護が行われます。(図1)さらに、訪問看護を行う病院・診療所数は横ばいですが、訪問看護ステーション数は増加傾向にあります。(図2)これらから在宅医療には訪問看護ステーションが重要な役割を果たすことがわかります。

図1 訪問看護の仕組み
図2 訪問看護師テーション数及び訪問看護を行う医療機関数の年次推移

出典:https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000823123.pdf

さらに、上述したように、今後の在宅医療・介護は、「重症者」、「ターミナルケア」の役割を期待されており、さらに、患者・利用者が安心に自宅等で療養するには「24時間体制」で対応することが求められています。24時間対応ができるように体制をとるためには、看護職員の人数が多くいることが必要で、訪問看護ステーションの大規模化が進められています。このような体制をとっている訪問看護ステーションは、「機能強化型訪問看護ステーション」として、診療報酬で更なる評価がされています。従来、訪問看護ステーションの人員基準は常勤1名を含む看護職員2.5人以上となっていますが、機能強化型訪問看護ステーション1は、看護職員が常勤7名以上、看護職員の割合6割以上の体制が必要となっています。(機能強化型2は看護職員5名以上、6割以上、機能強化型3は看護職員4名以上、6割以上)他にも機能強化型訪問看護ステーションは、上記のニーズに対応するために、24時間対応体制加算の届出、重症者の受け入れ、ターミナルケアの実施などが要件となっています。さらに、近年では地域における訪問看護の人材育成などの役割が期待され要件に追加されています。(図3)今後の在宅医療の要となる機能強化型訪問看護ステーションの増加が求められています。

図3 機能強化型訪問看護師テーションの要件

出典:https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000920430.pdf

最後に

今回は、地域包括ケアシステムの社会的背景を説明し、今後、在宅医療の充実に向けた期待とそれを担う訪問看護ステーションについて解説させていただきました。次回は、訪問看護からの理学療法士等の訪問の役割について、より具体的にお伝えしていこうと思います。

引用資料 (注1)厚生労働省「在宅医療の最近の動向」https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/zaitaku/dl/h24_0711_01.pdf

[文]吉倉孝則

理学療法士からみたこれからの訪問看護