推しの存在は人生そのもの。演技力に圧倒され「2.5次元俳優」の沼に落ちる

推しの存在は人生そのもの。演技力に圧倒され「2.5次元俳優」の沼に落ちる

アイドルファン界隈から使われ始めたとされる「推し」という言葉。現在では、その対象はアイドルに留まらず、俳優、声優、アーティスト、スポーツ選手、YouTuber、漫画やアニメのキャラクターの他、なかには鉄道や仏像といった幅広い「推し」を持つ人たちがいます。2021年には新語・流行語大賞にもノミネートされており、コロナ禍で憂鬱な毎日を「推し」の支えで乗り切っている方も多いのではないでしょうか。

そもそも「推し」とは何なのか。「推し」とは「他の人にすすめること。また俗に、人にすすめたいほど気に入っている人や物」(デジタル大辞林より)のことを指しています。「推し」とは単純な「好き」では言い表せない、もっとそれ以上に尊さや美しさのような熱い想いがそこにあり、人生を彩る存在とも言えるのかもしれません。

訪問看護を通してお客様の「生きる」を看る私たちですが、そんな私たちの「生きる」を支えてくれる存在が「推し」というスタッフもたくさんいます。この連載では、ソフィアメディで働く人たちの「推し活」事情についてインタビューをしていきたいと思います。

今回の「推し」は…

記念すべき第1回目は、2.5次元系の舞台などで活躍中の櫻井圭登さんを推している看護師さんから「沼に落ちたキッカケ」や「推し事」についてお話を伺いました。

*推し活に関する表現
「沼に落ちる」・・・深くハマること
「推し事」・・・推しに関するファン活動全般

最近よく耳にする「2.5次元」とはそもそも何なのか。アニメや漫画などの「2次元」の物語を、舞台やミュージカルといった「3次元」で表現をした作品のことを指します。2次元と3次元の中間という意味合いで、ファンのあいだで呼ばれ始めました。

アニメや漫画を原作とした舞台は、1966年に行われた『サザエさん』、1969年には『巨人の星』、そして1974年に宝塚歌劇団が初演を行った『ベルサイユのばら』などがありました。2003年に初演を行った『ミュージカルテニスの王子様』や、2015年に刀剣を鑑賞する女性が増えるといった社会現象を巻き起こすキッカケとなった『刀剣乱舞』の登場により、「2.5次元」という言葉が定着したとされています。

2.5次元の魅力は何と言っても「再限度の高さ」になります。髪型や衣装はもちろんのこと、話し方や立ち方まで本物そっくりで、今回お話を伺った看護士さんも、櫻井圭登さんの演技力や役作りに対するストイックさに惹かれて沼に落ちたようです。

それでは、櫻井圭登さんとの出会いや推し活事情についてお聞きしていきたいと思います。

「2.5次元」との出会い、推し始めたキッカケ

──今回は「2.5次元」についてお聞きしますが、もともと何かハマっているものはあったんですか?

昔はアニメのキャラクターが好きで、そういうグッズを集めていました。2.5次元系の舞台に行くようになったのも、もともと好きだったアニメがキッカケです。

櫻井圭登くんを応援してからは、2次元から2.5次元に移りましたね。何か一つのことしかできない、両立ができないので。

──キッカケとなったアニメを教えてください。

高校星歌劇-スタミュ-というアニメで『スタミュ』と呼ばれています。男の子たちが音楽芸能分野の学校に通いながら、ミュージカルスターを目指す物語になります。

原作のアニメが好きで見ていたのですが、2017年に舞台化されることになりました。当時、舞台化が流行り始めていた時期だったので「スタミュも流行りに乗ったんだ」と思いましたが、舞台になるとどうなるのか楽しみにもしていました。

──その舞台を観に行かれて、櫻井圭登さんにハマったんですか?

実は、初めて観に行ったときはあまり印象に残っていなかったんです。むしろ、好みのタイプというわけではなかったので。

でも、同じ舞台をまた観に行ったら、なぜか櫻井圭登くんにしか目がいかなくなってしまい、そこから推し始めました。

──それは、櫻井圭登さんが演じられていたキャラクターが好きだったからですか?

そのキャラクターは特に推しではありませんでした。純粋にその俳優さんの演技に見入ってしまったからなのかもしれません。

──2.5次元系の舞台俳優さんはみなさん演技力がすごいと思いますが、その中でも櫻井圭登さんに惹きつけられたのはなぜですか?

普段はふわふわしていて少年のようなイメージなのに、舞台に上がると全く印象が変わるんですよ。『スタミュ』の演出を担当していた吉谷さんの記事Twitterにも「櫻井圭登の魅力は、演じるのではなく変身する」と書かれていて、まさにキャラクターが憑依しているように感じるんです。

2.5次元の舞台は元となるキャラクターがいるからこそ、櫻井圭登くんの役作りに対する真摯さや真面目さがすごいんです。『刀剣乱舞』という舞台では、いろんな刀が人の形になり、それぞれのキャラクターになっています。櫻井圭登くんが演じたキャラクターの元となった刀が京都に展示されていたのですが、その刀を使っていた人の歴史や、その刀によってどんな傷が付けられたのかを見に行ったというエピソードがあります。

これは櫻井圭登くんを推すようになってから知った話ですが、役作りに対してそこまで追求する姿や、それを自分の演じる役に落とし込む姿は、生き様や働き方としても尊敬します。

あとは演技力だけでなく、普段の姿からは想像ができないくらいダンスがキレキレ。きっとそういうギャップに惹かれたのが推し続けている理由なのかもしれません。

気になる推し活事情。ガチャガチャになんと◯◯円!

──櫻井圭登さんを推し始めてからは、他の出演されている舞台にも行かれるようになったんですか?

櫻井圭登くんが出ている舞台は全部観に行ってます。最近だと『xxxHOLiC』という漫画が原作の舞台に出ていたのですが、女の子のキャラクターを演じられていました。演出もすごく良くて面白かったので、原作も気になり今読んでいます。

──2.5次元と2次元の行き来のようなこともあるんですね。ますます推し活にお金がかかりそうですが、その辺りってどうなんですか?

2月は櫻井圭登くんの誕生日イベントがあって、すごくお金を使ってしまいました。1回500円のガチャガチャがあって、いろいろなグッズが当たるというものです。その中には、チェキでツーショット写真を撮影できる券やお手紙のお返事券があり、それを狙っていたのですが、やっぱり確率は少なくて。それを当てるのに必死でガチャガチャをしていたら、7万円くらい使っちゃいましたね(笑)。

──すごい!まさに大人買いですね(笑)

イベントの前に、同じステーションの人たちが500円玉を集める手伝いをしてくれたのですが、それだけでは結局足りず、会場でもお札を崩して、無事にツーショット券を4枚とお手紙のお返事券を1枚当てることができました。写真はすでに撮ってもらったので、これから手紙のお返事が届くのを楽しみにしています。

──それだけガチャガチャをされたということは、他のグッズもたくさん当たったと思いますが、それはどうされたんですか?

キーホルダーや缶バッジがいっぱいあったのですが、いろんなことに使えそうなマスキングテープを500円玉を集めてくれたステーションの人たちに配りました(笑)。

──それ以外にもお金の使い方で周囲に驚かれたことはありますか?

同じ推し活をしている人にとってはわりと普通だと思いますが、一つの作品を何度も観に行くことは驚かれることが多いですね。

日替わりのシーンがあったり、カーテンコールで全キャストの中から俳優さんが1人だけ出てきて挨拶をするのですが、「今日は櫻井圭登くんかな?」と期待しながら、つい何回も観に行ってしまいました。

でも、何回も同じ作品を観ていることを友人に伝えると「え~」という反応をされることが多いですね。

──一番多く観に行かれたときは、何回ぐらいになりますか?

その舞台は長い期間やっていて、全20公演中13回観に行きました。当時はまだ新型コロナウイルスが流行る前でしたが、今は職業柄何度も行くことが難しくなってしまいました。それでも、1公演だけは観に行くようにしています。

他には同じ写真集を10冊以上購入されたことも!

──推し活はなかなか出費がかさみそうですね。

2.5次元系の俳優さんが出ている舞台に行くと、会場内にプレゼントボックスというのが置いてあって、そこにお手紙やプレゼントを入れることができます。私はよくお洋服を買ってきて入れるのですが、私が渡したお洋服を着ている場面に偶然立ち会ったり、SNSで見つけると「あっ…」と嬉しくなります。

そういうファンを大切にしてくれているのを実感すると、あまり気にせずお金を使ってしまいますね。

推し活とは「人生」そのもの

──あなたにとって「推し」の存在とはどのようなものですか?

やっぱりその舞台を観に行くことが楽しみだし、観に行くために仕事をがんばろうと思えます。あと時期柄、観に行くために体調管理をしっかりしよう、となります。そういうところで日々の活力になっていますね。きっと仕事だけだと、家と職場の往復だけで、何も夢中になることがなく、外に出る機会もなかったでしょう。

あとは、さっきも言ったように櫻井圭登くんの役作りに対するストイックな姿勢を見ていると、私も仕事をがんばらなきゃいけないな、っていうのはすごく思いますね。そういう点では、私にとって推しの存在は日々の生活や仕事を支えてくれる「人生」そのものですね。

[取材・文]岡田 [写真]本人提供